臨時千葉会:孫子の兵法を対戦プレイする

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ディスタントプレイン終了後、DRAGOONさんに教えてもらって対戦しました。

孫子の兵法と言うのは、欧州の人にはエキゾチックでミステリアスに映るようで、まぁそういう意味でのネーミングだと思います。実際にルールやシステムに兵法が反映されているという訳ではありません。

ただ、これは非常にタイトにまとまって、全ての要素が無駄なく緊密に絡み合った良いアブストラクトカードゲームと思いました。若い頃のクニッツアが作ったもののリメイクだと言われると信じてしまいそうです。

基本的には、1から6のカードを5カ所のエリアに配分して「戦争」のように勝負していき、勝った側が差分だけ自分の軍隊コマをエリアに配置していきます。これを3回繰り返して決算、それを3ルーチン繰り返してゲーム終了します。決算時に、そのルーチンでの各エリアの価値が勝っている側に算入され、その総合計が勝敗を決します。

1度勝つと、そこには勝者の軍隊が置かれ、これは次の同じエリアの勝敗に累積します。ですから勝ち続けるとそこには大量の軍隊が集積されたりします。

いくつか興味深いのは、エリア得点を得るには決算段階で1点でも勝っていれば良いのです。なので、無駄に大量に軍隊を配置してしまうと、実は軍隊が枯渇して勝っても置くものがなくて困ることも起こり得ます。

また、特殊カードが全部で10枚あり、これは使い捨てですが強力です。これをどういうタイミングでどういう場面に投じるかが問題。あと手札は全9枚で始め、1から6だけが繰り返し使用できるので、それ以外はいつ手札に入ってくるかはコントロールできません。

強力カードのカウンティングは必須ですが、カウントしていても必ずしもそのカードが手札にあるか、まだ山札か判りません。ここらへんのちょっとしたバランスが上手くできています。

マップは飾りのように見えますが、勝利した時に置く駒がないと、隣接した自軍支配地域から移動させる(義務)ルールがあるので、地形的な関係にも意味があります。

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臨時千葉会:ディスタントプレインを対戦プレイする

1月4日、松戸市某所。

無事に4人集めることができ、ショートシナリオを完全終了までプレイしました。プレイ時間は5時間を越えました。デザインサイドの言う「ショートなら3時間でできる」と言うのは、ルールがスムーズに運用できるように何度も同じ面子でプレイしないと辿り着けない気がします。

結論から先に書きましょう。

第5決算(ショートでは開始時点で2回の決算が終了した所から始まるのでプレイ中の決算としては3回目)にて、政府が条件を3点過剰達成して勝利しました。同時にタリバンも条件を達成していましたが、ジャストオンでしたので頭ハネとなりました。

政府(DRAGOONさん)の勝因ですが、減らされにくいパトロネージをじわじわと積み上げていき、最後はCOIN支配エリアの確立で勝利条件を突破しました。パトロネージを通常行動の範囲で減らせるのは、タリバンのインフィルトレートだけのようですが、そのことに気づいてタリバンのインフィルトレートを促すのが遅れたのが敗因でした。

タリバン(ゆいしかさん)は、頭ハネを食いましたが強いという気がしました。今回のプレイでは全てのゲリラを盤上に展開することに成功、タリバンとしては異常な高額資産を蓄財することにも成功しました。最終イベントカードでは、アフガニスタン全土で一斉テロに打って出て多国籍軍を崩壊状態に追い込みました。その要因の一つとして、ショートシナリオのセットアップ段階のランダムドローで大量の特殊能力カードを引き当てて凶悪な状態でプレイを開始したことがありました。これは引きの話しなのですが、本ゲーム、特にショートシナリオで発生しがちな事故の一つと思います。まぁ、マルチですから皆でタリバンを警戒すれば良いのですが、発見しても再潜伏してしまえるタリバンと言うのは非常に叩きづらい相手だったと思います。彼のヨーダも言っています、「ダークサイドは見えにくいのじゃ」。

軍閥(筆者)は、これまでの対戦でも良い所が見られませんでしたが、今回は資源40の条件を達成しました。もう一つの非支配人口15越えも一時的に達成したのですが、両者を同時達成できませんでした。非支配人口を自力で増やすために、サボーンを実施すると、せっかく蓄財した資源が減ってしまうので、トレードオフになっていて同時達成が難しいのです。とは言え、最後の勝ち切る段階のジレンマが見える所まで来たので、これまででは一番の善戦を演じました。あと、最後に政府が勝利達成のためにCOIN支配を確立しに来たのと、タリバンが全土に拡散したので、COIN支配とタリバン支配が進み、非支配人口が減少基調だったのも難しかったと感じます。

多国籍軍(トンデモさん)は、タリバンが最初から凶悪だったので苦戦を余儀なくされました。政府が順調だったので資金力は問題なくプレイしていましたが、その結果として政府支持派エリアを増やすと、そこが贈賄の温床となって政府のパトロネージ量産の遠因となり政府勝利をアシストする結果となってしまいました。最後の片付けでDRAGOONさんと二人だけになった時に話したのですが、一アクションで5パトロネージという政府の成果を見た時点で、多国籍軍基地のないエリアでのシビックアクションは自重して政府の勝ちを抑止する必要があったかも知れません。ただ、それは自分の勝利条件から離れる行為なので、なかなか出来ない決断であったのも理解できます。

結果はともかくとして、各勢力の特徴が良く出て、今回も新たな発見や理解が進み面白くプレイできました。ディスタント経験者が二人増えたので、これで次の卓も立てやすくなったかと思います。また、忘れない内にやりたいものです。

○バットマンブラックグローヴを読む

引き続きグラント・モリソンバットマンです。

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今回は非常にマニアックな作り。

後半の黒の事件簿は1950年代のポップな感じのバットマンシリーズの再録になっています。そこで登場したウィングマンを初めとする世界のバットマンたち。

その世界のバットマンたちが形成するヒーロークラブの面々が無人島に呼び出され、その一人が殺されてしまいます。「そして誰もいなくなった」とか「名探偵登場」のクローズドサークル路線です。

その後にはバットマンの不測の事態に備えて警察が3人の後継者を用意したという設定から、その一人がバットデビルとしてバットマンを倒そうと襲ってくる話しが続きます。

ポップな時代のエピソードを、近年のシリアスでダークなバットマンサーガの中に復活させるという力技。

面白さと言う点では、「ラーズアルグールの復活」に及ばないと思いますが、これはこれでストーリーライターの力量の見せ所であることは間違いありません。

ディスタントプレイン:軍閥について考える

最後に軍閥です。

この勢力が一番難しい気がします。

BGGでも軍閥の作戦について議論するスレッドが立ち上がって、いろいろな意見が出ていました。デザイン側のブライアン・トレインも出てきてヒント出ししていますので、興味のある人は必読です。

まず勘違いしやすいのは、「軍閥」などという訳語が当てられているので、ついつい軍事作戦を主体とする勢力だと思ってしまうことです。実はそうではないと、ブライアンはコメントしています。

軍閥の勝利条件は、中立人口が15を越え、かつ軍閥リソースが40を越えることです。

昨日書いた「支配の定義」を良く考える必要があります。COIN側も、タリバンも、半数を越えて他を圧倒していない限り、エリアにどれだけ軍隊やゲリラがいようとも中立になります。ですから、軍閥は自分のコマを動員してエリアを支配することを要求されてはいないのです。両者の争いが決着が付かなくなるように場所ごと時期ごとに適当にバランスを維持してやれば良く、自分が多数派になる必要はまったくないのです。

また、4勢力の中で唯一、軍閥だけがリソースをVPとして数えます。ですから、軍閥は経済活動に勤しんで貯蓄することで勝利に近づけます。これが軍閥の大きなメリットだという気がしてきました。

リソースは、決算フェイズに基地の数を受け取るのに加えて、破壊工作(サボタージュ)を受けていないLOCに部隊(軍閥の場合はゲリラ)を配置していれば受け取れます。LOCからリソースを得られるのも、軍閥だけの特徴です。

軍閥の弱点は、その蝙蝠のような立場ゆえに、政府とタリバンの両方を敵に回すリスクがあること、また勝利条件要素の流動性が高く、貯めやすくもあるのですが失いやすくもあるということ、そして要求される水準が合計で55以上と高いことです。

ディスタントプレイン:政府について考える

今度は政府です。

政府はCOIN陣営です。予算を多国籍軍と共有しています。しかし、その目的とする所は少し違っています。

政府の勝利条件は、COIN支配人口にパトロネージを加えて35を越えることです。

まず支配の定義を再確認しましょう。

地域は、多国籍軍+政府が、そのマスにいるコマの半数を越えている場合にCOIN支配となります。あるいは、タリバンが半数を越えている場合にタリバン支配になります。どちらでもなければ中立状態です。

昨日の多国籍軍で書きましたが、多国籍軍は少数精鋭なのでユニット数が足りません。ですので、COIN支配を確立するのは、政府軍と政府管理下にある警察コマが主力になります。

政府の優位性は、その部隊/警察コマ数の多さ、増員の容易さにあります。人数争いになれば政府は常に主導的な役割を果たすことになります。

もう一つのパトロネージは少し難しく、政府予算の基盤となる外国からの支援から政府高官がピンハネしている部分に当ります。パトロネージを増やすには、COIN支配エリアで統治オペレーションを行うことが必要で、かつ多国籍軍がいないことが必要です。この後者の条件が問題で、お目付け役である多国籍軍に監視されている所では実施できないのです。

タリバンに対抗するには、多国籍軍と協調することが重要です。土地勘のある政府ユニットがゲリラを発見し、多国籍軍が攻撃するという連携が成立すれば、ゲリラにとっては大きな脅威となるでしょう。

その一方で、上述のパトロネージの関係で、政府にとって直接軍事的に衝突しないものの潜在的な天敵は多国籍軍です。多国籍軍アフガニスタン全域を監視するような事態は、実はゲリラよりも政府にとって望ましくない事態なのです。

決算フェイズの再配置の時に、政府軍と警察は挙動が違うことを理解して置く必要があります。政府軍は基地のあるマスに撤収しますが、警察はCOIN支配マスに撤退します。そして、支配の再判定は全ての再配置が終わってからします。

つまり、政府軍が撤退して支配が揺らいだ時に、そこはまだCOIN支配なので警察はそこに撤退(と言うか交代増援)できるのです。これは重要です、試験に絶対出ます。

ディスタントプレイン:多国籍軍の作戦

今度は、多国籍軍について考えてみます。

多国籍軍の勝利条件は、政府支持人口と、予備兵力ユニット数を合計して30を越えることです。

多国籍軍は直接的な攻撃力を持っており、特に7種類の「能力」カードにより強化された場合には、理不尽な程に強いとも言えます。この点が多国籍軍の優位性です。

一方で、少数精鋭であるためにユニット総数が少なく、そのためにエリア支配能力が単独では極めて低いのです。また、いくら攻撃力が高くても潜伏状態のゲリラはほとんど攻撃できません(例外あり)。そのため、まず敵を発見し、それから攻撃するという段階を踏むため、その特徴を生かすには手数が余計に掛かるという難点があります。

「政府支持派」を増やすには、タリバンシャリーアの逆のシビックアクションを実施します。COIN支配エリアで決算フェイズにコスト3を支払うことで同様に政治動向を1段階シフトでき、これは重ね打ちできます。

予備兵力ユニット数を増やすには、第一に損害を受けないことが重要です。多国籍軍は強力なのですが、損害吸収部隊である政府軍を同道しないと直接損害を受けてしまいます。また、タリバン待ち伏せ攻撃には注意を払う必要があります。待ち伏せ攻撃は潜伏状態ゲリラで実施されるので、どんどん発見してしまうのが予防策になります。

初期設定で意外に兵力を盤上に展開してしまっているので、サージ・スペシャルアクティビティを使って盤上の兵力を予備に撤収することが勝利条件的には有効です。もちろん只でさえ少ないユニット数をさらに減らしますので、いろいろと不自由します。

多国籍軍で難しいのは、政府軍との連携です。

実は両者は予算を共有しているので使い方については協調が必要です。また、上述した通り政府軍を弾除けに使う必要があるので、そこでも協調した行動が必要になってきます。非正規軍側に負けたくない点は共通していても勝利条件は個別に判定します。ですから、政府軍が全面的に信頼できないことは常に頭に入れておかなければなりません。政府軍が勝ち逃げてしまいそうなら、政府高官の汚職に対して強い態度で臨む覚悟が必要です。政府の勝ち逃げを一番効果的に食い止められるのは、貴方なのです。

ディスタントプレイン:タリバンの作戦

それほどプレイ経験が豊富な訳でもないので、参考程度に読んでください。

タリバンの勝利条件は、

政府反対派人口と、アフガニスタン国内のタリバン基地数の合計が20を越えることです。

この「20」という水準は4勢力中で最低であり、目標水準が低いことがタリバンの最大の優位性だと思います。

その一方で、そもそも余所者ゲリラですので、アフガニスタン国内での基盤がもっとも貧弱な状態でゲームを開始します。このことが最大の問題点です。

勝利条件の一つである「政府反対派」を増やすには、人口を持つエリアの政治動向を動かすことが必要です。

そのための手段は2つあります。1つは、テロです。テロは、タリバン固有のオペレーションです。目標エリアにいる潜伏状態のゲリラを活性化して実施します。コストが1掛かります。もう一つは、シャリーアです。シャリーアは決算フェイズにタリバン支配エリアにおいてコスト1を払って政治動向を1段階移動できます。これはコストさえ払えば一篇に何段階でもできます。

これらを実施する上でタリバンが推し進めるべきことは二つです。1つは、潜伏ゲリラを目標エリアに送り込む(もしくは誕生させる)こと。もう1つは、実行のための予算を確保することです。アフガニスタン内に初期基盤を持たないタリバンにとっては、特に前者が序盤からの課題になります。

もう一つの勝利条件であるアフガニスタン国内の基地ですが、同じエリアに二つのタリバンゲリラがいるとラリーオペレーションで基地に変換できます。アフガニスタン国内の基地は、決算フェイズでの予算源にもなるので一石二鳥です。

このためにもアフガニスタンにゲリラを送り込む(もしくは誕生させる)ことが重要です。

ですので、タリバンの基本戦略はアフガニスタン全域に広く浸透して基地を作りテロを実施することと要約できます。

いかにもゲリラ作戦のイメージ通りなので、比較的考えやすくプレイしやすい勢力だと言えます。