ショートゲームレビュー:ミッドガルド

bqsfgame2007-12-30

ツクダの「ミッドガルド:失われた鍵」である。
これまたよりにもよってコメントに困る代物の登場だ‥(^_^;
困る理由がたくさんある。
第一にプレイしたことがない。
第二に日本のシミュレーションゲーム黎明期の野心作であり、当時の時代の水準を踏まえて語ってやらなければ厳しすぎるだろうが今の時代のゲーマーには理解してもらえないかも知れない。
第三にプレイしたことがなく、プレイできる気もしないにも関わらず、わたしはこのゲームの「野心的な部分」が結構、好きだったりする。
ということで、毎度のことではあるが、極めて主観的なレビューをさせていただくことにする。

ゲームのフレームワーク

ミッドガルドの野心的な部分はゲームの世界設定から始まっている。
このゲームの世界は二つの鏡像のように良く似た世界から構成されている。そして、互いの世界のヒーローと友人とヒロインの三人組は、それぞれの世界を旅して他方の世界への扉を開く鍵を探すのである。その旅路で様々な部族を臣従させたり同盟したり、敵対するものは滅ぼして宝物を奪ったりする。モンスターも登場しプレイヤーの行く手を阻む。
こうしたプレイを、二人対戦で行い、互いに自分のヒーロー一行を操ると同時に、相手の世界の敵対部族やワンダリングモンスターをプレイするのである。言ってみれば、相互RPGマスターのようなことをするのである。そして、両者は鍵を先に見つけるという競技プレイで連結されている訳だ。
第一部は一方のプレイヤーが鍵を見つけた時点で終結する。そして第二部へと移る。
第二部では鍵を見つけたプレイヤーは臣従・同盟した自分の世界の部族を引き連れて相手の世界へと侵略を開始する。この侵略戦争で勝ったプレイヤーはさらに第三部へと進むことになる。
第三部では二つの世界を統べ驕るヒーローたち一行に対し、世界の創生主が姿を現して対決することになる。実際にプレイしていないのでなんとも言えないが、プレイヤーズノートを見る限りでは侵略戦争で疲弊したプレイヤー陣営が神の四騎士を相手に勝てるはずがない‥という論調で記載されている。
このゲームは過程の物語を楽しむもので、最後にはプレイヤーたちのヒーローはいずれにせよなんらかの形で滅びさるものだという設計になっているのだ。

ゲームのサブシステム

上述したように独創的な世界観と豊かな物語性を持つゲームなのだが、どうしてプレイしたことがないかと言うとプレイアビリティが極めて悪そう(やったことがないので断言はしないでおく)なのだ。
先ず、鏡像世界なので同じマップを使うというのはアイデアとして悪くないと思うが、二つの異なるプレイを同じマップ上で進行させ、その両者の違いを全く同じユニットでアステリスクのあるかなしかだけで峻別してプレイさせるというのは視認性という意味で厳しすぎやしないだろうか‥(^_^;
これは極論すればマップをカラーコピーしてもう一式用意して分離してしまえば良く、広げる場所をどうするかという別の問題を解決できさえすれば許しても良いかも知れない。
次に問題なのは、マップ上を探索して敵対部族やワンダリングモンスターと出会うと、その戦闘は別の戦術マップで解決すると言うシステムだ。ツクダのゲームではありがちなことだが、ディティールについてゲームの全体像に照らしてどこまで採用するかというジャッジが極めて寛大なのだ。結果として、戦術マップに移した上でターンごとにDEXの順に移動して攻撃を解決するという戦術戦闘ゲームを、一度、全体マップのどこかで遭遇戦闘が起こるたびにやるようになっている。
またさらに凄いのがヘクス戦闘の時に単純な攻撃力/防御力+CRT方式でなく、戦術選択までさせるようになっているところだ。攻撃側、防御側とも戦術を選択し、その組合せによってCRTを使い分けるということになっている。キャンペーン規模のゲームで、三段階のストーリー構造を持つゲームに、これだけのディティールを注ぎ込むとどういうことになるのかというのは想像に難くない。結果として、わたしは未だにこのゲームをプレイしたことがないし、多分、一生できやしないのではないかと思っている‥(^_^;

それでも野心は買える

最初に書いた通りで、実際にプレイできないゲームかも知れないが野心的な作品として評価することはできると思う。まず、国産シミュレーションゲームの黎明期の作品でありながら、海外シミュの真似でなく「オリジナル」を作ることに成功している点である。そして、豊かな物語の創出という試みも意欲的であり、当時の水準からすれば良く考えられていると思う。
デザイン陣は当時の慶応HQのメンバーのようなので、時間が湯水の如くある学生のセンスでデザインしており、また当時のシミュレーションゲームブームの状況を考えればプレイする層も学生を想定したのではないかと思う。そうするとプレイタイムが長大に掛かりそうなデザインと言うのも、あながち非常識とは言えない。ルールを読む限りでは破綻してどうしようもないと思われるところはプレイ時間以外には見つからないので、もしかすると何十時間も掛けて遊び倒すと一生語れるような青春の思い出ゲームになったのかも知れない。
もちろん社会人ゲーマーには到底無理なことだが‥(^_^;
そんな訳でわたしは散々文句を言いつつもこのゲームが嫌いではないどころか、結構、好きだったりするのだ。同じツクダの「司政官」や、エポックの「魔法帝国の興亡」もそうだが、日本ゲーム界の真にオリジナリティのある仕事の一つとして誰かが語り次いでやって良いのではないかと思う。
ただ、このへんどれも「プレイして面白いということ」を期待してはいけない作品ばかりかも知れないが。