○自生の夢を読む

bqsfgame2018-10-23

日本SF大賞の最新受賞作です。
ゆるやかなくくりの連作短編集です。表題作は、水見稜の「マインドイーター」のオマージュ。水見も寡作でしたが、飛浩隆も寡作。
こちらは、忌字禍(イマジカ)と称する。言葉の増殖体が癌細胞的に制御不能になったもので、外側から見ると岩石のように見えると言う。この暴走的な文字増殖による物語創作機能によって言葉を使っている生物(人)に危害を与えるという奇抜な設定。
この生物に殺されてしまった圧倒的な物語創作力を持つ詩人アリスと、その友人が、いかにこの生物と対峙するか(退治の誤変換ではありません)の物語。
イマジネーションの迫力と言う点で、受賞は順当と感じました。
しかし、他の作品は、それよりは1ランク落ちる印象です。その中では冒頭作の「海の指」が面白い。こちらは、事象を分解した混濁として存在する灰洋の中から、事物を再構成する仕事を題材としています。これもなかなか凄いイマジネーションです。その昔に「コンベア」という同人ゲームがありましたが、あれを想起しました。
作者の執筆ペースから考えると、次に作品集が出るのは10年後でしょうか。もう少し書いて欲しいというのが本音ですが、質を下げないで欲しいとも思うので、まぁ気長に待ちますか。
そう言えば、水見稜さんは、もう書かないのでしょうか?