○ターンを読む

bqsfgame2005-03-30

SGCのYさんの薦めで北村薫の「スキップ」を読んだところとても良かったので。
内容を分析的に評価するとこれも良いと思うのだが、情緒的な部分で「スキップ」ほどには思い入れなかった。学園生活や暖かい人物群で彩られている「スキップ」に対して、孤立した無人の時環と数少ない登場人物の「ターン」はやはりタッチが随分と違う。
前半の孤立した無人の時環世界の描写は、小松左京の「こちらニッポン」を連想させたし、時環のイメージは、ディックの「時間飛行士へのささやかな贈り物」や、眉村卓の「トグシノ(短編集:遥かに照らせ)」という傑作を想起させた。
そんなほかの作品とのアナロジーもあって引き込まれるように読むとは行かなかったのだが、それでもこの題材で400ページを書き込んでしまう筆力は凄いし、終盤の柿崎君のエピソードからエンディングに至る展開も見事だと思う。タイムパラドックス的な問題が生じるのは、この題材では止むを得ないところもあると思うので個人的にはマイナスでないと思う。そう考えていくと、やはり凄い作品だなとは思う。
でも再読するときにどちらを手に取るかと思えば、やはり「スキップ」だろうと思う。心暖まるから。あと森真希という主人公の魅力ももう一つかも知れない。