☆アフターマンを読む

bqsfgame2005-04-18

しばらく前に話題になった「フューチャーイズワイルド」の前編ともいうべき作品。後続作の登場で復刊された。
高尚な大人の絵本と言った趣き。個人的には生物学は専門外なので妥当性のほどは判断できないが面白く読めた。
個人的に目から鱗だったのは食物連鎖の項。太陽エネルギー>植物>草食動物>肉食動物のピラミッドの比率が決まっており、太陽エネルギーの密度が違うので熱帯と寒帯では生物密度が違ってくるのだというのはナルホドと思った。また、食物連鎖の空白ができると、そこがきちんと埋まるというのもナルホドと思った。そんな知識を踏まえた上で想像の生物相を読んでいくと、確かに面白かった。
個人的にお気に入りはツンドラに住む巨大なウーリー・ジャイガンテロープ。前向きの角で雪かきしながら餌を探している巨獣は想像するに愛らしい。面白さと言う点ではミーチングとその要塞構築の飽和に伴う破局は、レミングスのそれより興味深い。要塞と呼ばれる安全な構築物を作る能力と繁殖力を併せ持ちながら、それ故に移住するときには無防備で破局して生体数が調節されるというのは危うい調和だと思った。
奇抜と言う点ではパラシュリュウは、草上短編の「ヒッチハイク」を思わせる。また、花を擬態して虫を食べるという収斂進化の実例、フラウォアーフェイストとフローアーも奇怪。フローアーと同じくバタヴィア列島に孤立したことで多様に進化した蝙蝠の一角ナイトストーカーは不気味の極みだろう。これを表紙に持ってくるあたりのセンスは好みが分かれそう。
図書館で借りて読んだのだが、これなら持っていて時折パラパラとめくりたい気もする。かなり面白かった。「フューチャーイズワイルド」も読んで見たいものだ。