○ゆっくりと南へを読む

bqsfgame2005-05-01

病院で奥さんと交互に付き添いをしている。何もしないでやきもきしてばかりいても不安が伝染するばかりなのでせっせと本を読んでいる。
先日の「お喋りセッション」に続いての91年の草上仁さんの短編集。「お喋りセッション」が素晴らしかったためか、今回はそれほどには入れ込めなかった。
ベストは表題作の「ゆっくりと南へ」。スロウリイという月に1cmずつ移動するキノコの傘を巨大にしたような動物。その動物の進路とぶつかる道路建設。スロウリイの下に願い事を書いた紙を入れるという七夕のようなならわし。ノスタルジックでハートウォーミングな物語。アイデア自体が抜群に切れるということではないと思うのだが、語り口で読ませてくれる。若かりし日の森下一仁さんを思い出したりした。
「殺せ!」は「ケイゾク」を思わせるヒュプノサイコホラー。
「おじいさんの時計」は、タイトルとは裏腹にドキドキさせる短編。最後がハッピーエンドなのが嬉しい。