○霧の中の二剣士を読む

bqsfgame2005-06-10

ファファード&グレイマウザーの3巻。
中期の短編3本と、シリーズ最古の中篇「魔導師の仕掛け」をジョイントで繋いでいる。
「ランクマーの夏枯れ時」は、二人がランクマーで別の道を歩み、ファファードは修行僧として、グレイマウザーは盗賊のナンバー2として歩むというところから始まる。しかし、盗賊がファファードの仕える新興宗教を金蔓として目を付けたところから二人の運命は交錯し‥。少々、作りにわざとらしさがあり過ぎる気もするがシリーズ中でもタッチが変わっていて面白い。
「憎しみの雲」と「海王の留守に」は、いずれもこのシリーズらしい怪異を中心とした短編。
最後の中篇「魔導師の仕掛け」は、舞台がディアドコイ戦争時代のテュロスというビックリの作品。プトレマイオス朝セレウコス朝などが陣取りで交錯しているので、ディアドコイ戦争の知識があると、なんとなく嬉しく読める。作品としては、ちょっと「ハムナプトラ」風で、魔導師の仕掛けに飛び込んでいく二人+αがそのカラクリを見届けていくというもの。シリーズの他の初期作と異なり、ワンポイントの怪異で描いた短編ではなく、たっぷりと描写を取って十分な長さのある作品に仕上がっている。そのため、却ってシリーズ最古ながら近年のファンタジーに近い読み応えになっているかも知れない。少し謎解き部分の長さが長すぎる気もするのだが、良い作品だと思う。