アップフロント:装甲部隊前進をソロプレイ

このシナリオHは、大雑把に言えばシナリオDの装甲兵力ありバージョン。攻撃側には密閉式AFVが与えられ、防御側には歩兵砲と増援が与えられる。
率直に言って両軍に砲兵器があって射ち合うと、このシチュエーションが「アップフロント」の限界を越えていることを痛感する。「アップフロント」のシナリオ開始距離「0」は通常の歩兵火力が効果を発揮しなくなる限界辺りに設定している。このため初期配置ではMG以外は火力がなく、前進することで少しずつ火力が発揮されてくる。
ところが、この距離と言うのは砲兵器にとっては既に交戦可能距離に十分に入っていて、貫通力も十分ある距離になっている。つまり、歩兵戦をやっている分には、シナリオ開始距離は本格的な戦闘の始まる位置として適切なのだが、砲兵器が射ち合うのであればもっと手前から射ち合っているのではないかという不自然さが漂う。
また、AFVにしても砲兵器にしても一つ上のスケールの「スコードリーダー」をプレイすればわかるように、1台で運用する訳ではなくフォーメーションなどで運用しているのが自然であろう。その意味でも1台のAFVと1基の砲が至近距離で射ち合うこのシチュエーションはいかにも不自然である。
それでも実際にプレイすると、一応はゲームになってしまうのが「アップフロント」の恐ろしいところで、このゲームのシミュレーション性については問題意識を持ちながらプレイしないと騙されてしまうなと思う。
また、ゲームルールの整合性という意味でも、砲とそのクルー全員を1枚のカードで表示するやり方は、AFVに近い扱い方だが白兵戦になったときには例外的な扱いを必要とするのでスッキリしていない。いろいろな意味でこのシナリオあたりには「アップフロント」の扱える事象の限界というものが出てきているといえるだろう。
プレイでは、ソビエトの歩兵砲がAFVを先に撃破し、最終的にドイツの分隊が崩壊して終了した。