○江路村博士のスーパーダイエットを読む

bqsfgame2005-09-30

草上仁さんの93年の短編集。
表題作はマッドサイエンティストものの王道を行く三本立て。「スーパーダイエット」は消費カロリーが摂取カロリーを上回るように作られたダイエット食品の話し。途中でカラクリが見えるところもあるが最後まで大真面目に書ききっているところがおかしい。「反射剤」は雑用を反射的にこなすようにしようというのだが‥。「CMスキッパー」はCMを飛ばしてみるためにタイムマシンを応用するというアンバランス発明の生み出す混乱。個人的にはマッドサイエンティストものは好きなので楽しく読めた。
「悪徳ランド」は潔癖な社会が実現すると今の我々の社会はレジャーランドに見えてしまうだろうというシュールなアイデア
「最後の納税者」は税金を納めないための法人化がトコトン進んだ状態を描くこれまたシュールなアイデア
「飛んで行きたい」は転送機が当たり前になってしまって、普通に物理的経路を辿って移動することがまったくなくなってしまった社会を描くこれまたシュールなアイデア
この当りのストーリーの作りは似ていて、シュールなアイデアを徹底的なところまで突き詰めておいて滑稽な状況を大真面目に描いて笑わせてくれている。オチが読める部分もあるが、それは問題でなく、この着想をここまで徹底的に詰めて書ききるか‥というところがさすがだと思う。
「ホロ・ドレス」は、妙にサスペンスフルな感じを持つ未来社会のワンシーン。タイトルがそのままネタバレだと思うのだが、これも書き込んでサスペンス感を出してしまっているところが面白い。
今回の短編集全体を通して、アイデアはワンショットだが、それを徹底的に詰めているところと書き口で読ませているという印象を受けた。