○マラキアタペストリを読む

bqsfgame2005-11-18

ブライアン・オールディスの1976年の作品。サンリオSF文庫から邦訳が出たのが86年。実に原作の出版から30年近く経っての初読となった‥(^_^;
トルコに攻められるマラキアという都市国家の物語。‥なのだが、読んでいくと、どうもホモサピエンスではなく、ホモサウルスが進化している別の世界の物語。マラキアは不変の魔法を掛けられているという伝承があり、それ故に幾度もトルコの包囲を受けても滅びない‥ということになっているらしい。そのため、変化はこの守護魔法に相反する危険なものとして都市の有力者たちの秘密組織によって排除されている。
そんな中、しがない役者にして節操のない主人公ペリアン・ドン・キロロは不景気で仕事がないため、ザーノスコープという新開発の銀塩写真を使った新タイプの演劇に参加することに。その共演者の名家の令嬢アルミダに惚れ込んでしまった。と言いながらも他にも人妻と情事に及んだり、別の共演者の貧乏娘を口説いて肘鉄を食ったり。
基本的にはしょうもない男の色恋沙汰の物語だったりするのだが、気球に乗ってトルコ軍にペストをばらまいて英雄になったり、令嬢の父親に認めてもらうために古代生物狩りに行ったりもする。マラキアを改革しようという動きにも巻き込まれかかったりもする。
しかし、最後は自身の浮気を弁護するための言辞をモノにしたと思っていた令嬢と友人に逆手に取られて裏切られてしまい、放蕩ものの恋の末路として幕を閉じる。
何が凄いといって、結局のところしょうもない男の恋の末路でしかないストーリーを、読み応えのあるタペストリー的な作品に仕上げてしまっているところが凄い。オールディスの力業というのはその通りだと思う。
サンリオのオールディス作品は、「世界Aの報告書」がイマイチだったので本作も積読になっていたのだが、これは失敗だった。もっと早く読むべきだったと思う。
さらに惜しまれるのは、作者のこの路線の延長線上に位置する大作「ヘリコニア」三部作が未だに未訳だということだろう。