×悪魔は死んだを読む

bqsfgame2005-11-19

RAラファティの1971年の長編。サンリオSF文庫から邦訳が出たのが1986年。
ラファティと言うと、独特のほら話し的な魅力ある短編で昔から読んでいるが、その彼がかなりの数の長編を書いているというのは噂には聞いても実際に日本で読めるようにはなかなかならなかった。86年にこの作品と「イースターワインに到着」がサンリオから相次いで出たときには嬉しい驚きだったものだ。
ただ、実際に読んだ感想としては、なかなか素直に喜べない。作品は二つの人生を生きるフィネガンを主人公に、タイトルにもある悪魔と呼ばれる人物を対象とする殺人ミステリーである。フィネガンとシーワーシィは、悪魔と名乗る人物と遭遇して船旅に出るのだが、実は二人はこの悪魔を既に殺して埋めた記憶が甦ってくるのである。船内の人物が殺されたらしいが死体が消えてしまったり、主人公たちは追っ手から逃れるため現金を分割して分散して逃げたり、そこでまた新たな船旅で奇妙な仲間にたくさん出会ったりする。最後に悪魔は双子であることの謎解きが一応される。
しかし、ミステリーとして全体が整合してパズルピースが収まったと言うような印象はなく、いつもの短編でと同じように一貫性など無視してどんどん拡大していく印象が強い。フィネガン自身の二重性が示唆されて物語りは終わる。
率直なところを言えば、「短編の方が良いかな」という気がした。整合性はないが独特の魅力のある30ページの短編を読むのは楽しいが、独特の魅力はあるが整合性のない350ページの長編を読むのは結構辛いのだ。ラファティの長編作品は出版に漕ぎ着けないものも多数あると言われているが、無理はないかも知れない。