☆フェイダーリンクの鯨を読む

bqsfgame2006-01-16

富士見文庫版の方を読んでいる。
マージとメイの水着姿と言うサービスカットから始まるので、どうも軽薄な印象を受けるのだが読み進んでいくと内容的には非常に充実していると思った。
クレギオンは、わかりやすい宇宙冒険物エンターテイメントでありながら、ハードSFとしてのしっかりとした考証がある。少々アニメチックな印象もあるが魅力的な人物が溌剌と動き回っていてサクサク読み進める。
大枠としてはデュマレストサーガや、宇宙飛行士グレンジャーの冒険と同じだと思うのだが、読みやすさもハードSFガジェットの魅力も一枚も二枚も上手で、これが読めて日本人で良かったとさえ思う。
今回のキーポイントは、リングを持つガスジャイアント、そのリングを住処とするハイドラーたちの文化やテクノロジーが最初の見せ場、続いてはガスジャイアントを太陽化してテラフォーミングをしようというプランが続き、これを阻止するためにガスジャイアント生物をハリボテで偽装しようという話しが続く。次々に出てくるアイデアがいずれもテクノロジーにバックアップされているのが嬉しい。
此処まで来るとタイトルからしてもオチは、偽装ではない本物の鯨が出てくるしかない‥と予想も付くのだが案の定。しかし、そこで終わらず、なぜタイミング良く鯨が出てくるのかと言うところで、ガスジャイアント鯨の生態の話しになって、リングと全てが結びついて収斂する。お見事!
シリーズ第1作のときはRPGのシナリオみたいという印象を受けたのだが、本作は見事に仕上がっていると思った。メイとデビッドのエピソードもジュブナイルSFとしては魅力的だと思うし、何処を取っても申し分ない。誉めすぎ?