☆ハイペリオンの没落[上][下]を読む

bqsfgame2006-02-09

海外出張のお供には懸案の大作を持っていくという習慣になってきているが、今回は「ハイペリオンの没落」。
ハイペリオン」を読んだところ、短編の集合体と言うべき内容で、各編には出来不出来があり、読みにくいもののところでスローダウンしてなかなか読み終われなかった。また、ようやく読み終わったところで全体としては何も進展しなかったので、「なんじゃこれは?」ということになりモラルダウンしてそのままになってしまった。
とは言え、世評を聞いて四部作の終わりまで買ってしまってあるので、いずれなんとかせねばと思っていた次第。
読んだ感想として、結局のところ、ハイペリオン二部作は二部まとまらないと作品の体を成していないという印象を受けた。解説にある「出題編と解題編」と言うのはその通りだと思う。また、短編集合体だった前作に対して、本作はストレートな長編大作になっており、こちらの方が遥かに読みやすい。
読んでいて、侵攻を受けるところは「ダウンビロウステーション」を感じるし、電脳空間のところは士郎正宗の「オリオン」を連想した。他にもいろいろなものを思い起こさせ、かつて大原まり子がハヤカワSFコンテストに入賞したときの小松左京の選評の「SFがインプットでSFがアウトプット」という表現を思い出したりもした。
様々なSF要素をたっぷりと盛り込んで一応のまとまりを付けた読み応えある大作なので、なるほど世評が高いのも一定の理解はできるかと思った。
ただ、個人的にはこの一年間で読んだSFのベスト10(具体的には「消えた少年たち」、「少年時代」、「航路」、「ハリーポッターと炎のゴブレット」、「ニックとグリマング」、「最後の戦闘航海」、「影のジャック」などと並ぶ)くらいには入ると思うが、オールタイムのベスト10と言うところまではいかないように思う。
マイナス点としては、先ず「長すぎる」ということ自体が含まれると思う。どうも90年代以降のアメリカSFを見ると、「長いこと」=「良いこと」のような感じや、シリーズもの、三部作、四部作などの異常なまでの隆盛があっていただけない気がする。
エヴァンゲリオン」との類似は、いろいろな意味でその通りと思う。「エヴァンゲリオン」は確かに面白かったが、同じような意味でアニメについても繰り返してみる思い出のアニメは何かと言われれば、TVシリーズなら「未来少年コナン」や「宇宙戦艦ヤマト」になる。オールタイムベストと言うことを語るとなれば、やはり多感な時期に自身が強く影響を受けた作品と、後出しで完成度が高い作品のどちらを取るかと言えば前者になるだろう。歴史的な意義や思い入れを除いた議論というのは評論家的な議論としては成立するのかも知れないが、単なるSF好きの主観的な議論としては意味がないように思う。なにより読書と言うのは非常に主観的なものだとも思うし‥。
とまれ、これで仕切り直しで次に機会があれば「エンディミオン」へと読み進んでも良いかなという気にはなった。しかしながら、「航路」が良かったので、「ドゥームズデイブック」という懸案もあったりする‥(^_^; 幸せな悩みなのだと思う。