☆ロングテールの法則を読む

bqsfgame2006-05-14

最新のベストセラーの一つ。
表紙に「80対20の法則を覆す」と書かれているが、本書の真髄はズレたところにある。しかし、パレートの法則が覆されてしまうというセンセーションで手に取らせているので、これはこれでマーケティングとしては口惜しいが正解なのだろう。
冒頭から「ロングテール自体はただの現象に過ぎないが‥」と書いてある通りで、主要顧客2割が8割の売り上げをもたらすというパレートの法則に対して、そのほかの長大な延長線がもたらす売り上げが主要な顧客の売り上げをもたらし得るというのがロングテール現象。しかし、これだけでは長大な延長線を相手にしたビジネスが成り立つことにはならない。
実は逆で、長大な延長線を相手にしてもビジネスが成り立つような仕組が世の中に登場したからロングテールという現象が白日の下に晒されただけで、実際には現象は発見されるのを待っていただけで事実としては昔から存在していたのだろう。これは物理法則はすべからく人間が発見する前から存在し成立していると言うのと同じ。
重要なのは、どのような仕組が登場したことでロングテールがビジネスの対象となり得たのか、そうしたビジネスでは従来のパレートの2割だけを相手にしたビジネスとどこが違い、どこは同じまま扱えるのか。そして、それはどのようなビジネスにまで当て嵌まるのかだろう。
本書の観点は、ロングテールビジネス登場時代の新たなマーケティングを議論するとともに、従来型のマーケティングの問題点も鋭く指摘している。単なるロングテール現象を巡る本を越えた内容を含んでいる。
「売り上げは売れる仕組作りである」と主張し、「うまくいったものを残し、うまくいかないものをやめる」だけと結論付ける。そのためには「費用対効果を測定する」ことが重要で、「マーケティングを自動化」できれば良くネットビジネスだけのものではないと説く。
まとめでは、「製造現場を21世紀とすれば、営業・マーケティングの世界は中世の暗黒時代」とまで言い「根性、才能、勘、センスといった前時代的なキーワードが飛び交っている」と指摘する。
かなり過激な言葉を選んでいる気もするが、本書の全体を読むと言いたい趣旨は良く分かり、少なくとも自分も試して見なくては反論のしようもないと思う。マーケティングを真面目に考えて徹底的に突っ込んで議論している姿勢が少なくとも感じられる。
勤務先は典型的なリアルのメーカーなのだが、早速ながら応用できるものは試させてもらおうと思っている。