○しあわせの理由を読む

bqsfgame2006-05-30

「SFベスト201」あたりでは最もプッシュされているグレッグ・イーガンの日本オリジナル短編集の第2弾。
上記の通り世評が高いものだからどうしても期待過剰になり、それほどは喜べなかった。冷静に考えて見て玉石混交という評価だろうか。
良かったと思うのは、「適切な愛」、「血を分けた姉妹」、「しあわせの理由」だと思う。これらが巻頭と巻末に位置しており、正直に言うが途中はかなりかったるかった。挫折して途中で読むのを止めていたら「×」評価だったろうと思う。
表題作はさすがの出来栄え、病気の影響で慢性幸せになり、治療で幸せ不感症になり、そこから幸せを感じる能力を手術で取り戻していくというストーリー。いろいろな読み方ができそうだが、単純にストーリーを追うだけでも充実した読書時間を過ごせる作品だと思う。
「適切な愛」は、脳だけを助けられる状態の夫を、そのクローンでボディを調達できるようになるまで自分の胎内で保存する妻の話し。率直に言ってかなりグロいと思うが、SFが提示する近未来の可能性。
「血を分けた姉妹」は、B兵器のバーストで同じ病に倒れた姉妹が治療で別の結末に至り、その理由を追求していく話し。これもいろいろな読み方ができそう。
それ以外の作品では、サイエンス的な設定と、ストーリーのバランスが悪いように思った。特に「愛撫」、「チェルノブイリの聖母」、「ボーダーガード」あたりは、何をしたいのか個人的には理解できないまま終わってしまった。