レトロの提起した問題:マーカーレス

旧SLにしても、ASLにしても非常にマーカーを多く使うゲームだった。
スタックは往々にしてマーカーだらけになり、下手をすると実体のあるユニットよりも状態を示すマーカーの方が多くなってしまった。旧SLで代表的なものとしては、準備射撃マーカー、DMマーカー、隠蔽マーカー、狂暴化マーカー。COI以降では、CEマーカー、TIマーカーが加わり、DMと併せて二文字マーカーの御三家になった。
膨大な量のマーカーの種類はプレイを助けるどころか混乱させかねなくなり、ASLではマーカーは使用するフェイズごとに色分けされるようになった。マーカーの種類は増え続けていった。特に防御射撃の手順の複雑化により、防御射撃をどの段階までやったかを示すマーカーが登場し、残存火力を置くための数値マーカーが新たに登場した。
AFVはマーカーの宝庫で、様々な兵装ごとの故障マーカーがあり、車体機銃の故障、同軸機銃の故障、対空機銃の故障、主砲の故障、走行不能が別々のマーカーで管理される。これにハッチの状態、砲塔の旋回、乗員の状態などのマーカーが加わる。
「レトロ」は、このマーカーの問題について「極力マーカーを使用しない」ことを徹底している。マーカーが増えることは、マーカーの設置や除去という手間を必要とし、特に余りに種類の多いASLのマーカーに至ってはユニットケースから必要なマーカーを見つけ出すこと自体が一苦労だった。これはプレイのスピード感を大幅に削いでいた。
「レトロ」はこうした分析の元、マーカーを極力使用しないようにルール自体から考え直している。準備射撃という手順はなくなっているから準備射撃マーカーなど必要ない。DM状態のルールはなくなり、回復チェックの瞬間に敵の通常射程内にいるかいないかによる修整を判定するだけなのでDMマーカーも必要ない。防御射撃の手順は単純で機械的になったのでその類のマーカーもほとんど必要ない。
「レトロ」をプレイした後にASLのマーカーのトレーを整理して、使うものだけにしようとしたところ実はほとんど何も残らないことに愕然とする。しかし、この効果は劇的でありプレイのスピード感の大きな一翼を担っていることは疑いない。