ウクライナ44をソロプレイ

bqsfgame2006-09-10

ルールブックが正味5ページ半しかないので読んで早速だが並べてみた。
結局、2時間半ほどで5ターンを終了するところまで進めることができた。
一言で傑作!
こう言うのも変だが、元ゲームのブダペスト45などこのゲームの敵ではないと思う。最大の理由はシチュエーションがブダペスト以上に面白いことだろう。旧SLの拡張キットクロスオブアイアンのトラックコンボイルールの導入シナリオが「フーベズ・ポケット」だったが、その作戦。なにより中黒氏のゲームとしての切り出しのセンスの勝利だろう。
1)ソビエト軍による包囲形成から始まり、ドイツ軍の包囲脱出までを描くストーリー性とドラマチックな展開
2)1の魅力を引き出す絶妙の勝利条件設定として、ドイツ軍が望ましい西への突破を果たすと脱出した部隊のステップ数はドイツの得点に、ドイツ軍が次善の南への突破を果たすと両軍とも得点なし、突破できずに包囲されて終わるとソビエト軍の勝利得点となるというのが非常に上手く働いている
3)包囲環の形成と、そのいずれかのポイントを狙っての突破と言うシチュエーションに、フォッグオブウォーの魅力を持つシステムがマッチングしている
‥という3点だろうか。
デッシュの「ブダペスト45」は、既に包囲されているブダペストに対して、険しい地形の最短距離と、電撃戦可能な迂回路の選択肢のあるゲームだった。ブダペスト包囲部分はそれだけでも結構深刻なゲームで、ドイツは的確に守らないと救出部隊が来る前に全滅しかねなかった。そのため外部からのアプローチで圧力を減じ、かつ適切なタイミングで呼応して脱出を試みる必要があった。普通に言えば「ブダペスト45」のシチュエーションも既にゲーム的には相当に面白い。しかし、さらにその前の「どうやって包囲するか?」から始まるゲームはさらに面白い。
同じようなシチュエーションのゲームとしては、アドテクノスの「オペレーション・ウィンターストーム」があったが、ユニット数が多くフォッグオブウォーの魅力に劣っていたので、やはり醍醐味でもプレイアビリティでも「ウクライナ44」に圧倒的に軍配だろう。
中黒氏はゲームとして面白い切り出しをする天才的なセンスを持っているとは以前から思っていたが、今回は久々の場外ホームラン級だと思う。「ブダペスト45」を隠れたクラシックとする評価があるようだが、それなら「ウクライナ44」は日本が誇る東部戦線作戦級の傑作ゲームとして世界に打って出て良いと思う。システムが流用だと言うのが減点かも知れないが、それがもっともマッチする題材と巡り合わせて機能する勝利条件を与えて完成させた功績は素晴らしいと思う。独創を尊んだ越田さんあたりは苦い顔をされるかも知れないが、システムデザインだけではゲームはできず、デベロップメントこそが点睛の作業だと思うので声を大にして評価したい。
画像は撤収時点。ソビエトの包囲環が形成され右下にドイツの航空補給マーカーが置かれている。左上ではソビエト軍のテルノポリ攻撃が進んでおり、中央では突破を目指すドイツ装甲部隊と、これを真正面から迎え撃つソビエト装甲部隊がギシギシ言うようなガチンコ激突しているところ。一方、右側、写真から切れた辺りでは包囲の後衛ドイツ軍がソビエト歩兵部隊の追撃を受けながら西へ敗走してきている。各所で様々な綾が生まれており、部分部分ではどちらも攻撃に回ることがある。しかし、それは全体としてドイツ軍が包囲されて終わるか脱出するかと言う決定的な分かれ目を争っている。