×暗い光年を読む

bqsfgame2006-11-10

1964年のオールディスの長編。1970年にハヤカワの銀背で出版された作品。
いわゆるファーストコンタクト物なのだが、そこは重厚な筆致を誇る一方でSF的なヴィジョンという意味ではそれほど斬新さを求めないオールディスなので、独特の雰囲気に仕上がっている。
探検隊が外宇宙で出会った犀型の宇宙人は、多数の開口部から人間よりも広い音域の音を同時吹奏する言語を話す一方で、排泄物まみれの生活を送り、独自の生物学的宇宙船に乗って宇宙を航行していた。排泄物まみれの生活をする犀型の宇宙人に真の知性があるのか?‥という議論が英国で巻き起こる一方で、英国とブラジルとの限定戦争の中で、痛みを感じないらしいこの宇宙人の特性が利用できるのではないかという陰謀も巻き起こる。
結局のところ、宇宙人とのコミニュケーションは個人のレベルで果たされるのだが、それは人類全体の成果には繋がらなかった。そして、遥かに長命な宇宙人は地球人よりずっとゆっくりとしたスケジュールで、彼らを野蛮な生物扱いして狩った人類に対する報復に出ることを暗示させるエンディングを迎える。
率直に言って、「地球の長い午後」、「グレイベアード」、「マラキアタペストリ」と言った傑作と比較すると見劣りする。これがハヤカワ文庫に再録されなかったのは当然かも知れない。オールディスらしさはあるが、異質なものとのファーストコンタクトというテーマでは、レムの三部作のような強烈なライヴァルがありもっと成功している。文明に対する批判という要素は感じ取れるが、その面でも特別に本作が成功しているとは言い難いだろう。