ゲームシステムの魅力

戦術的作戦級ゲームとして、非常に魅力のあるシステムだと思った。プレイ感が近いのは、スケールが多少違ってしまうがWW2のTCSだと思う。TCSの初期作に確か現代戦のものがあったかと思うのだが、TCSも現代戦に利用できるとすれば近いのは当然かも知れない。
基本ルールでは航空兵力や電子戦や化学兵器や地雷や工兵は登場しない。登場するのは歩兵、装甲兵力、そして砲兵であり、それらを指揮するコマンド体系である。このシステムの大きな特徴は砲兵とコマンド体系だろう。新セントラルフロントシリーズ(チャック・カンプスのデザイン)でも痛感したが、現代戦のこのスケールでは的確な砲兵支援がもたらす影響力は絶大なものがある。集中した装甲部隊の攻撃力をも上回る砲兵支援の威力には絶句させられる。
的確な砲兵支援を実現するためには、それを意識した兵力配置や適切な投入の意思決定が重要になってくる。砲兵は射程や指揮連携が的確に前線に対してできる位置に近付いていると同時に、それ自体が直接攻撃を受けて支援不能にならないように一定の安全を確保できる位置にいる必要がある。砲撃支援をするためには前線の支援対象と、支援する砲兵の両者を指揮下に収めた司令部が両者を指揮範囲に治めている必要がある。射程や指揮範囲はWW2のゲームに比べると長くなっているため、これはそれほど難しくはないように見えるが、一方で装甲部隊の機動力も上がってきておりWW2のような戦線で考えられるゲームと異なり、交差点を守って点で動き合う現代戦ではどこが後方で安全かは非常に判断が難しい。
したがって、相手の機動突破の意図を考え、自身はどこの交差点でそれを止めるかを考え、その交差点での戦闘を支援できる安全な位置に砲兵を配置し、適切な指揮が実施できる位置に司令部を設置しておく必要がある。これを間違えてしまうと、少なくとも数ターンの間は的確な砲兵支援ができなくなり、相当に苦労することになる。
以上は主として防御的な感覚から書いているが、攻撃側にも同じ悩みが少し別の観点から存在する。
攻撃側は敵の配置(戦力規模は分からないがユニットの存在有無は分かる)を見て、攻撃路を選択できる。敵の砲兵と思しき存在があれば、これに接敵して直接戦闘を強いてしまうことは有効な作戦になる。時間のスケールが短いこともあって、補給のルールがないことから、縦深突破はリスクが少なく非常に有効である。
NATOワルシャワの能力の差も非常に明確に描かれている。ワルシャワ軍は上級司令部に指揮能力が集中しているため規模の大きな運用が効率的に出来る一方で、下部レベルでの柔軟な運用はできない。また、予定した攻撃に対して集中した砲撃ができる一方で、防御では限定的な砲兵支援能力しか持っていない。このため、ワルシャワは、自分の攻撃を計画したら全力でそれを実施し、NATOの反撃についてはなるようになるものと諦めてしまわざるを得ない。ワルシャワの攻撃が十分な戦果を挙げ、NATOの守備体勢にダメージを与えればNATOは効果的な反撃ができないはずなので、ワルシャワにとって「攻撃は最大の防御」と言うのはいろいろな面で真実である。
今回はワルシャワ側を持ったのでNATO側のジレンマについては体感できなかったが、NATOは逆の悩みを持っているだろう。NATOは下部指揮系統に柔軟性があり、柔軟な砲兵支援運用ができる。しかし、ワルシャワの波状攻撃に対してどのタイミングでどの程度の規模で砲兵を投入していくのかは、難しい。敵の意図を挫くためには最初に投入した方が良いし、ワルシャワ軍が熟練していなければこれが正解だろう。しかし、ワルシャワ軍が熟練してくれば十分な回数の波状攻撃や、主力攻撃を容易にするための牽制攻撃を用意してくるであろうし、その場合には最初に撃ち尽くしてしまうことは自殺行為になるかも知れない。
的確な準備をした上で作戦に望み、その上で意思決定が重要だと言う点で、このゲームは非常に現代戦らしい雰囲気を持っている。
上級ゲームで航空戦が入ってくると砲兵が後方の安全な場所にいる‥ということ自体が制空権のない側には難しくなってくると予想される。また、電子戦は、WW2に比べて長い射程や指揮範囲を制約する新たな間接的であるが非常に有力な攻撃手段となるのかも知れない。
是非とも上級ゲームまでプレイして見なくてはならないと感じさせる魅惑的な現代戦作戦級ゲームである。
[つづく]