ゲームシステムとメカニクス

このゲームを「イルミナティ」と同じシステムと称するコメントを見掛けたことがある。確かに箱にも「古典的なイルミナティのシステムを基に‥」と書かれているが、「イルミナティ」と同じシステムと言い切ってしまうのは、少々乱暴な整理だと思う。実態を少し丁寧に説明しておこう。
プレイヤーの立場はハッカー、最初のセットアップ、および山札からめくられてくるシステムカードを使って全員で世界のネットワークをカードを組み合わせて構築していく。最初のカードを起点に、そこから周囲に伸びる矢印に従ってネットワークを築いていく。このカードの組み合わせ方は「イルミナティ」と良く似ている。しかし、決定的に異なるのは、イルミナティでは各自のパワーグループを構成し、それを使って中立のグループや他プレイヤーのグループを攻撃したり、逆に防御したりした。これに対して、ネットワークは全員共通のハッキング対象でしかない。
ハッカーたちは、ネットワークの中のダイアルインポイントに対して先ずハッキングを試みる。これが成功すると、そのシステムを踏み台にして矢印で隣接するシステムへとどんどんハッキングの対象を広げていくことができる。このハッキングしてアクセスできる範囲が所定の規模に達するとゲームに勝利することができる。ある特定のシステムに複数のプレイヤーがアクセス可能になることもあり、その意味では「イルミナティ」の各グループカードが特定のプレイヤーのパワーグループに帰属するものだったのとは、やはり異なるゲームシステムだと言っても良いと思う。
その一方で、プレイしていると「イルミナティ」な感じがするのは、カードの数字を使って様々な修整を加えダイスを振って判定するというメカニクスが同じなせいだろう。また、自分がルートアクセス(完全なアクセス)を確立できているグループが持っている属性と同じ属性を持つグループへのアクセスが容易になると言う修整の付き方なども同じメカニクスと言って良い。
全体の枠組は違うのだが、カードの組み合わせ方や、アクションの判定の仕方、修整の付き方などの個別のメカニクスの部分が高い共通性を持っているのだ。このため実際にプレイすると「イルミナティ」をやっているかのようなデジャビューに囚われる。
プレイの方は、自分の使っているマシンのアップグレードをしたり、ネットワーク上にアクセスが拡大するに連れて、能力や修整が拡大していく仕組になっている。他のプレイヤーに対する妨害工作は、相手のアクセスしているシステムのハウスクリーニングを実施してアクセスを排除したり、密告して他のハッカーを官憲に売り渡したりすることで行われる。直接的な攻撃と防御でやり合っていた「イルミナティ」と比べて間接的でいささか陰湿な世界だと言えるだろう。
コンポーネント的には「イルミナティデラックス版」などと比べるとイラストなどもなくカードは無機的で寂しい感じがする。ネット上のデジタルなせ界だからそれらしいとも言えるが、ガジェットの彩り感が弱い気がするのは否めない。