○ラジオは脳にきくを読む

bqsfgame2007-01-27

最近の話題の本。
視覚依存型の生活では脳の一部しか使わず全体として脳は萎縮していく‥という怖いメッセージの書。セリングメッセージはセンセーショナルだが、内容はマイルド。脳神経外科の最近の情報を生活習慣と結びつけて様々な提案をしている。わかりやすいが、理系の人が読むと少々データやメカニズムの部分が食い足りない印象を受けるのではないかと思う。
現在の7〜80代の人のアルツハイマー発症率は先進諸国はどこでも4%程度。しかしながら、今後、TV世代、飽食世代が同じ年代に差し掛かってくると発症率は大きく上がるのではないかと本書は予想している。理由はラジオは映像がない分、想像力を脳が自然に使っているが、テレビでは受動的な作用しかしておらず脳を働かせるチャンスが奪われているからと言う。
指摘されてみて思うが、確かにラジオは音しかなく途中を聞き逃すと話しが見えなくなるので、きちんと聞いていないと話しが繋がらない。渋滞情報や天気予報など自分に関係のあるところをうっかりすると聞き逃すのは思い当たる。その一方で音しかないので、視覚や手がフリーだから「ながら」に向いており、同時に関連のない二つの作業をやっていることが多い。この二つの関連のない作業を同時にやる時、脳は非常に活発に働いているのだと言う。
読書も良いとされているが、特に目読でなく音読を推奨している。最近流行の速読と逆の方向を薦めている。これも目で見て、声に出す‥という複数の脳の部位を同時に活性化し、脳全体を使うことが良いとしている。
織り込まれているコラムの中で面白いのが男性と女性の脳構造の違いで、左右に分かれた脳を繋ぐ脳梁が女性の方が太いのだと言う。これが女性の方が「ながら」が得意な理由ではないかと言う。その一方で男性の方が一つのことに徹底的にのめりこみやすいとも。
手書きで手紙を書くことも推奨されている。相手のことを想像し、自分のことを省みて、メッセージを考え、字体を気を付けて手を動かして書くことは脳の全体を使っていて良いのだそうだ。確かに年末に年賀状を書いていて思うのだが、人に読まれることを前提に手書きの文字を書く機会は近年、極度に減った気がする。
恐ろしいエピソードは脳の可塑性のところに出てきて、仔猫の片目を閉じて一週間過ごさせると、視覚情報を処理する部分の脳が発達する時期に閉じていた目は視覚自体に異常がないのに脳の側の処理ができず実質的に見えなくなってしまうのだと言う。これはその後は開けておいても戻らないらしい。感覚器官の発達は脳の発達と連動しており、そのタイミングを逃してしまうと取り返しが付かないというのは恐ろしい。
これは別の本でも読んだ気がするのだが、日本人は虫の声を左脳で聞いて音声のように聞いているが、他の国の人は右脳で聞いて雑音としてノイズフィルタリングしてしまうので聞こえていないというのも面白い。この本では一歩進んで日本人は左脳ばかりを使いすぎなのではないかというメッセージを出している。
興味深い部分は多いが全体としては中身が薄めの本書だが、最後に脳を鍛える週間スケジュールと言う提案があるところがミソだろう。運動、計算、音楽などを組合せ、一日の最後は記憶を鍛えるための日記書きで終わる生活の提案がされている。