帯の「マネージメントに正解はない!」とか、「経営の腕を磨くシミュレーション」と言うのは少々大袈裟に過ぎるかなと言う気がする。
個人的な感想としては、「改めて考えてみる機会」を作る書籍と言う風に理解しておけば良いと思う。会社と言うのは個人にとっては大きな与件であることが多く、会社の営業戦略を変更するとか、ビジネスモデルを変えるとか、たとえば広告媒体を変更するとか、突然経験のない大トラブルに巻き込まれるとか言う機会はそうはない。しかし、そうなってから考えるのは非常に難しく、遭遇する前にトレーニングしておくのは多少なりとも有用であろう。多くの人は、「そんなことは『上の人』が考えること」とか「そうなっても『会社』がなんとかしてくれるだろう」と思っているのだが、冷静に考えると「上の人」や「会社」の判断を形成するのは自分も含んだ会社全体であることの認識が低い‥(^_^;
本書は「考える機会」を作ることが一番重要だと思うので、正解というのもないし、評点をするようなものでもないと思う。自分でケースを読んで、識者のコメントを読む前に自分なりの考えを整理してからコメントを読むと、いろいろと思うことがある‥という仕組である。
数年後の自分が読むことを想定して今回のリーディングでの自分の考えとコメントを読んでのギャップ認識を書いておけば
ケース1:製造物責任の対処
自分はどうしても技術屋なので、「原因の究明」という謎解きに注目してしまうのだが、こうしたケースで会社として大事なのは「顧客への対処」が速度最優先であることだと改めて感じた。
また、特に日本では無責任なマスメディアが被害者の代弁者であるかのような顔をして「真相究明」を声高に主張して、結果として被害者への対処の優先順位が後退して見える気もする。また、国が被告になる訴訟の国の対応などを見ても「因果関係の明確化」が「被害者への対処」より優先されていることがあるような気もしてならない。
ケース2:顧客を一律に扱うべきか
遊園地で高価格の優先搭乗パスを出すか‥という問題なのだが、この観点でYES/NOで答えるよりも他に考えて良い工夫がいろいろあるのではないかという気がする出題。ディズニーのファストパスはその一つであるし、ウェイティングタイムがロスタイムでなくする工夫というのももっと本格的にあって良いと思う(ディズニーも含めて)。
ケース4:グローバル戦略とローカル戦略
これもケース2と同じでYES/NOで答える前に調べること議論することがいっぱいあるのではないかと感じる出題。実際にこういう会社があったら、まずそれを実現するための組織と責任分担から手を付けるのではないかという気がする。豪腕の個人に任せるのだったら、その人と合わない人が止めるリスクは覚悟するべきで、それは豪腕を起用する社長の判断ではないかという気がする‥(^_^;
ケース5:顧客が望まない品質改善
これは開発商品を手掛ける上で考えさせられるケースだと思った。集中で個人的にはケース2と共にいちばん興味深かった。開発商品の設計の上で問題になることは二つあると思う。一つには、ニーズには「顕在化していて顧客が自覚している事前調査で的確に評価できるもの」と、「潜在的すぎて顧客がイメージすることがまだできないマス調査で的確に評価され得ないもの」があるということ。したがって、前者のタイプのニーズについてはきちんと調査することが必要だが、後者のタイプについてどういう形で判断するかが非常に難しい。しかし、後者についても仮説は置くことができ、仮説を明文化すると検証方法というのもで出てくるはず。
二番目の問題は仮説の検証をするための投資やリスクが非常に大きい場合にどうマネージメントするかである。一番目の問題をクリアして仮説と検証段階を設定しても、そのための負担が大きい場合にどうするかは会社として意思決定の難しい瞬間だと思う。これこそが開発商品を出していく会社のクライマックスかも。
ケース3とケース6は、個人的には自明の問題ではないかと言う気がした。
この「ジレンマ」シリーズは他にも出ているので、また機会があれば‥(^o^)