☆MBAファイナンスを読む

bqsfgame2007-09-02

個人で買ったら、直後の会社の研修資料になった‥(^_^;
日本の多くの企業では今でもP/L、B/Sによる会計をベースに経常利益を議論しているのではないかと思う。アメリカでキャッシュフローが言われるようになって久しく、海外機関投資家の関心を重視せざるを得ない立場の企業から徐々に変わっているとは思うがそれでもまだまだ定着したとは言いがたい気がする。
今回、初めてきちんと勉強したのだが、なるほど面白いし、非常に有用な概念だと思う。特に最近、18xxシリーズを頻繁にプレイしているので、投資家の立場と、会社経営の立場を繋ぐ指標として非常に面白く考えさせられた。
自分なりの理解を手短に、いささか雑に書くとすると、キャッシュフローは手に入るキャッシュである。当たり前だが、ある事業、ある投資案件から手に入るキャッシュが大きいほど望ましい。ただ、事業や案件によっては、すぐにキャッシュが手に入るものもあれば、雌伏期間があって将来的にリターンが返ってくるものもある。こうした時間要素を加味して全て現在の時点に揃えて評価するのが現在価値の概念である。そして、未来のキャッシュについて、そこに含まれるリスクが案件によって異なるから、リスクが高いものほどリターンが応分に高くなければならないと考え、現在価値に割引く時の割引率が異なる訳である。
このときに最初に資金調達をして投資する場合に、資金調達のための資本や債務にコストがある。このコストを分析する必要があり、これにより資本コストが変わるが、同時にリスクも変わる。此処に最適資本調達という課題が生まれることになる。
ここらへんまでが第二部までの内容であり、ファイナンスが学問としてツールとして非常にしっかりしたレベルになっている部分かという気がした。
第三部以降は、デリバティブとして先物取引、オプション、スワップの紹介、そして今まさに旬な話題である証券化が紹介されている。この辺は豆知識的な感じで体系的なツールという感じはしない。
最後に経営戦略とファイナンス理論の関係について一章もうけているのが本書の良いところだと思う。特に日本では伝統的な日本経営と、アメリカンファイナンス指標経営の確執があるので、株主重視経営とコーポレートガバナンスという項が設けられ、この点についての見解が示されているのが興味深い。会社は株主のものか、経営者のものか、従業員のものか、そのサービスを受け取る社会の共有財産かというような話しである。ファイナンスは投資を希少資源として、その最大成果を求める‥という視点の学問なので、株主視点に近い。しかし、未来の長期的なキャッシュをも継続的に獲得する視点に立てば、社会に有用なサービスを提供し続けることとは矛盾しない。そのために、優秀な経営者を起用し、その成果に高額の報酬を支払うこととも矛盾しない。永続的な事業を良い経営者のもとに持続していくことは、雇用の安定と矛盾はしない。短期的な視点で会社をキャッシュにして食い逃げてしまおうという持続性のないモデルに走らない限りは、それほどファイナンス経営はおかしな結果を生むという訳でもないのかも知れない。
その意味ではファイナンスはツールでしかなく、結局のところそれを活用する人次第ということなのかも知れない。