実体経済と金融経済

サブプライムに端を発する今回の一連の騒動を見ていて覿面に思うことが一つある。
昔は実体経済があり、それに金融経済が影響されたり、あるいは実体経済の状況を調整するために金融経済をいじったりしていた。実体経済というものが主役であり実像であり、金融経済は虚像でありカラクリでしかないという認識だったと思う。
しかし、今では金融経済はかなりの実力を持っており、もはや実体経済の方を振り回すほどになってしまっている。また、金融当局も金融経済の存在が大きくなりすぎて制御することがもはやできなくなっているように思える。結局のところ、金融経済はいまや主役であり、実体があるかないかは別として、実体経済と呼ばれるものを振り回して従としてしまう力をもはや持ったのではないか。
これはインターネットが、リアルメディア(活字)をもはや上回る影響力を世界に対して行使しているのと同じで、事実として認めなくてはならないのだろうと思う。
ところが、金融当局などは依然としてこのへんの認識が甘いように思う。
日経新聞の9/29の長官に掲載されたグリーンスパンFRB議長のコメントは、こうした認識をきちんと持っていた人がアメリカ経済を守ってくれていたことを改めて有難く思い出させてくれた。バーナンキさんが悪いと断言するには早いと思うが、グリーンスパンさんが優れた見識と新しい時代を認める勇気を持って取り組んでいたことを改めて感じさせられた。
今年の初めくらいからサブプライムは時限爆弾としてカウントダウンしており、その不良債権が多発するのは今年の下半期、競売物件実体経済に悪影響を与えるのは来年の上半期と予想されていた。その通りのシナリオが時間通りに進行しており、これに対して金融当局は何ができるのだろうか? また、実体経済は金融経済に振り回されずに抵抗できるのだろうか?
個人的には上述したような認識から考えてみても、金融当局にできることは限られており、実体経済はそれなりのダメージを受けてしまうだろう。アメリカの実体経済が回復基調に向うのは、早くても来年の下期以降ではないだろうか。そうするとドル安はしばらく続くのではないだろうか。