×ティーターンを読む

bqsfgame2007-11-17

1980年のローカス賞SF長編部門の受賞作。
1982年に創元推理文庫から訳出された。ガイア三部作の頭ということで、完結してからまとめて読もうと思っていたのだが、本国では完結して久しいが一向に邦訳の出る気配はない。最近、ローカス賞受賞作をまとめて読んでいるので、ついに完結を待たずして読むことに。
内容的には巨大な宇宙構造物に挑む探検隊という「宇宙のランデブー」あたりをキッカケに流行したシチュエーションから始まる。この巨大な構造物の中を探検する物語なのだが、実はこれ自体が衛星規模の宇宙生命体本体と、その寄生対象である衛星だという話し。
こう書くとSFらしく聞こえるのだが、内容的には女性キャプテン・シロッコの冒険ファンタジーと言った方が良いだろう。率直に言ってクライマックスはまるで「オズの魔法使い」のようだし、エンディングに説得力があるかというと疑問を感じる。クライマックスまでの冒険物語が読み応えがあるだけに最後のまとめ方はあたふたとして座りが悪い感じがする。
同じようなことは「スチールビーチ」でも感じた。途中まで抜群に面白いのだが、謎解きが唐突で説得力がなく、そこから後がガタガタな印象を受けた。
本作は三部作の頭なので、この後がどうなるかという期待値も含めての受賞だったと思うが、その後の顛末や近年のヴァーリーの本国での評価、日本での翻訳のされなさを見ると次にさらなる失望が待っているのではないかという不安を感じる。不安を含めて×にしてしまったが、途中まで面白いということは確か。