○言の葉の樹を読む

bqsfgame2007-11-30

2001年のローカス賞受賞作。
先日、1975年のローカス賞受賞作である「所有せざる人々」を読んでから間もないが、同じル・グインの受賞作。とは言え四半世紀の歳月を越えておりタッチは随分と変わったのが分かる。
率直に言って、「所有せざる人々」は文章のタッチも内容も生硬な印象があるが、その一方で力強さを感じさせた。対して「言の葉の樹」の文章のタッチは円熟しているし、ストーリーも穏やかに進展しているように思うが、逆にインパクトは弱くなった印象がある。もちろん作品の長さが短いということもあるかも知れない。
禁書が実施された世界を訪れた外交官が、その世界の生き残っている書物を探り当てていくというストーリーで、そこに人物の物語が重ねられて味わい深い読み物になっていると思う。ローカス賞受賞はともかくとして、これまでル・グインが決して好きではなかったわたしが、「所有せざる人々」と本書を読んで、かなり評価を高めに見直したのは事実だ。さすがに巨匠と呼ばれるだけのことはあったかという印象だ。