親の役割

本書は言語療法士や、障害児と対することのある保育士の人をメインの対象に書かれている本だが、この本を読むとことばの問題はこどもと一番触れ合う時間の長い親が見てやるのが良いことだということも理解される。ことばの問題は日常の中で評価するのが一番適切だし、その中でこどもの問題の原因がどこにあるのか観察し推理し仮説を立て対策を打ち効果を見るためまた観察に戻ってPDCAサイクルを回していくことになる。そのための機会や時間をいちばんたくさん持っているのは親なのだ。
その一方で親にないものがあり、それが専門的な知識や、対策として世に今はどれだけ利用できるものがあるのかという知識やアクセスなのだと思う。それを補うべくサポートするのが言語療法士や専門機関の保育士の仕事という位置付けかも知れない。そうすると最後の章にもある通り、こうしたポジションの人には「家族全体をどう支援するか」という視点が要求されることになる。そこには対症療法的なテクニックの話しとは次元を異にするモチベーションの問題が登場し、ゲマインシャフトでのコーチングと言う会社や教育機関でのコーチングとは違う社会心理学的な課題があるのかなという気がする。