ドイツ軍のお付き合い

にも関わらず、結果的にドイツ軍の投了図となったのは、実はソビエトの悪手にドイツがお付き合いしてしまったからだと思われる。
ドイツの装甲部隊は地図盤4の南北いずれかから進入することを選択できるのだが、ソビエト主力のいる北に入ってきた。北側は地形が開けており、車両台数に勝るソビエト軍にとって戦いやすいことも相俟って、経路を間違ったソビエト主力は適当な目標を得て無駄にならずに済んだ。
ドイツ装甲部隊が南から進入して621高地へと登る中央の進路を左側面から妨害し、山頂の対戦車砲と連携する布陣を取っていたならソビエト軍の装甲部隊はもっと苦戦しながら前進することになったかも知れない。しかし、実戦ではドイツの戦車部隊は地図盤4の北でソビエトT34の大部隊の十字砲火を対戦車砲の援護なしに受けて壊滅してしまうことになった。
次に大きな幸運だったのは、ドイツ軍の盤外支援砲撃がゲーム終了まで一度も火を噴かなかったことだ。これは砲撃によるダメージはもちろん、砲撃地域のヘジテーションロール修整という副次的な効果も合わせて非常に影響力が大きいので、ドイツにとっては大きな誤算だったと言える。
そのほかにもSLシリーズならではのミクロなランダムイベントは多発し、ドイツの射撃は妙にKIA効果を多く挙げたし、逆にその結果としてソビエトの狙撃兵は妙に活動的だった。ソビエトには3名もヒーローが登場した一方で、駆逐能力を期待されたSU122やSU152は早々に弾薬切れになる車両が多く半分しか働かなかった。
そうしたミクロな部分でのラックはあったにせよ、全局的にはソビエト軍の采配ミス、ドイツのお付き合いという流れで後から悪手を打った方が悪くなるという囲碁、将棋の通例通りにドイツが苦しくなったのではないかという気がする。
最後のドイツの悪手は崖下にいるT34と山頂の工兵部隊が撃ち合ってしまったことで、これは621高地を最後に争うための兵力としての価値から考えれば工兵の方が数倍の価値があったので悪い撃ち合いだったのではないかという気がする。T34などは斜面を登ってくるところを山頂の対戦車砲で待ち構えていれば良く、戦闘工兵の仕事はむしろ山頂を確保しに登ってくるソビエト歩兵を射撃したり、最後に山頂で白兵戦で撃退したりすることに専念し、いたずらに戦車砲の前に立つべきではなかったのではないかという気がする。
実は6ターン目の時点では、ソビエト軍は621高地の北側の崖を前にして途方に暮れていた。どうして走行性能に劣るSU122やSU152を南から緩斜面を登らせて、走行性の高いT34を登れない崖の前に投入したのかと苦悩していた。しかし、結果としてT34が山頂の最強抵抗兵力を砲撃で粉砕する戦果を挙げてくれることになり、これは望外の展開だった。このあたり、盤面の反対側から見ていると、そちらにはそちらの事情があると思うのでドイツ軍側のコメントも聞いて見たいところだ。