☆時間帝国を読む

bqsfgame2008-06-27

1987年の角川文庫。
川又千秋のこの時期の作品は傑作が多いと思う。特にどうしたものか角川文庫は打率が高い気がする。SFマガジンに掲載された火星人先史と天界の狂戦士はいずれも素晴らしいと思う。
この時間帝国は書下ろしではないかと思うが、うっかり死角に入ってしまって今頃になって読んでいる‥(^_^;
誤解を恐れず雑なことを書けば、メビウスの輪に着想を得た輪廻ファンタジー。世界を西へ西へと旅していくと、また元の場所に戻ってくるのだが、その時に時間も遡ってしまい自分の過去と接続すると言う内容だ。
全体の仕掛けはそんな形なのだが、この作品の魅力はそこではない。西へ西へと旅すると新たな都市、新たな文明と出会うのだが、主人公にとってそれが未知のものであるというセンスオブワンダー感がひしひしと感じられるというところが魅力なのだ。
出逢う世界は産業革命レベルだったり、近未来レベルだったりする程度で、それほどSFとして突拍子もないものではない。しかし、それを中世レベルの文明から出発した主人公の視点から新鮮に描くことに成功している。この辺は描写力的なものなので説明するより現物を読んでいただくよりないところだろうか。いずれにせよ読んで損はないことと思う。