○第18期囲碁名人戦全記録を読む

bqsfgame2008-06-28

1993年の囲碁名人戦
名人:小林光一はこの期を防衛して前人未到の名人六連覇を達成した。対する挑戦者は前期と同じ大竹英雄
さて、二期連続同じ顔合わせとなった18期。率直に言って17期と比べると見応えという点では一歩も二歩も譲るだろうか。スコアが離れたということもあるが、挑戦者大竹の独特の芸が名人の芸とは異質なところでぶつかるという場面が前期ほど切迫したところで出なかったように思う。
この二人は15期にも対戦しており、合計の成績は小林の12勝6敗でダブルスコアとなっている。しかし、棋譜を一つ一つ読んでいくと、とてもダブルスコアになるほど両者の力に差があるとは思えない。大竹の不思議な強さが負けても光ることが多いのだ。
第2局で勝った小林名人は、
「一日目の打ち掛けの段階でいけそうだと思ったし、寄せでも大きなところを随分打てた。正直言って、もっと勝てるかと思ったのに、やっと一目半ですからね。大竹さんの不思議な力を感じないわけにはいきません」
と述べている。
見損じで最後に大竹がポカ負けしてしまった最終局の解説をしていた今村も
「悪そうに見えても、いつの間にか追いついている大竹先生の不思議な強さが印象に残りました」と語っている。
つまるところ前期も指摘された大竹の打つ「わかりにくい」「価値のはっきりしない」手は、実のところ価値がかなり高い手であることが負けながらも実証され続けたということだろうか。
そうだとすると、大竹の価値のはっきりしないように見えて価値の高い手を、なぜ価値が高いかをはっきりと説明できない現状は、まだまだ囲碁には分からないことがたくさんあるということなのかも知れない。コンピューターが将棋で人間に迫りつつある昨今だが、囲碁ではまだ人間の感性が数値化できない価値を感じ取る優位性を持っているのだろうか。