○第30期囲碁名人戦全記録を読む

bqsfgame2008-10-06

第30期の挑戦者は当時「中年の星」と呼ばれた小林覚九段だ。趙・小林の時代と平成四天王の時代に挟まれてしまい、その間の世代と言うのはタイトルに恵まれない印象がある。小林覚九段も趙棋聖を倒して棋聖位に就いたのが大きいが、その後はあまりタイトルに恵まれていない。
今回の挑戦では久しぶりの二日制の番碁ということで調子が出る前に三連敗して徳俵に足が掛かってしまった。そこから三連勝して盛り返し、特に第六局ではヨセの強い張名人が終盤で間違えての逆転半目勝ち、この流れでは大逆転かと思わせた。
しかし、最終局では態勢を立て直した張名人が、持ち前の厳しい踏み込みで勝利して際どく防衛を達成した。
この七番勝負の中で小林九段は、張名人についての発見として「読み切れるところは最後の一手まで結論を出し、読みきれない部分ではとりあえず無難な道を選ぶ。突っ込んでいくところ、割り切れるところを賢く見分けているよね」というコメントをしている。
これを読むと、この話しはそのまま最近の国際棋戦で猛威を揮う韓国勢の勉強の仕方に通じるような気がする。死活やヨセという正解の出る部分を徹底的に勉強し、布石でどう打っても一局なところは適当に割り切っているように見えるのだ。こうした韓国勢の猛威や、張名人の実績、特に国際棋戦では日本では張名人しか通用していないかのような状況を見ると、少なくとも今の囲碁技術の水準では上記の勉強の仕方が勝つためには最短距離なのかなという気もする。