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bqsfgame2008-11-22

1979年に奇想天外に連載された山田正紀の初の宇宙SF。
山田正紀本人の後書きによると、「小説としての完成度も申し分なく、想像力の結晶度もたかく、SFのおもしろさ、荒々しさも十二分にそなえている」作品だそうだ。
うーむ‥(^_^;
率直に言って、なかなかコメントしがたい。
前回の「エンジエルエコー」の時にも書いたが、ある時期から山田作品の主人公たちは心を病んでいる印象が非常に強くなったと思う。本作は「エンジエルエコー」の8年も前の作品だが、やはり登場人物たちは深く病んでいる印象を受ける。主人公の女性民俗学者ルーは、滅び行く惑星に住む謎の種族の研究のため、他に地球人もほとんどいない氷惑星に暮らしている。その研究対象の種族オーディンこそは、影の主役なのだが、滅びると判っている惑星に何故に住み暮らしているのか、これもまた謎ではあるが正常な印象を与えない。そして、物語の途中から登場するコマンド戦闘員は、人間であることを辞めた、これまた病んだ存在だ。
確かに物語りの完成度は高く、舞台の氷惑星のイメージもあって、高い結晶度の硬質で透明な作品ではあると思う。けれども、物語にはどこか生き生きとした部分が欠落した印象があり、個人的にはどうにもやり切れない思いで読み終わることとなってしまった。