ショートゲームレビュー:オメガウォー

bqsfgame2009-01-28

アルマゲドン2121年。
十日の間に11、000発の核弾頭が北半球で爆発したと言われている。
2122年のリオデジャネイロ会議では、96の参加国が条約に調停した。国際連合のみが、今後は核兵器保有する権利を持つこととし、核戦争に責任のある諸国の権利を制限することを議決した。
結果としてアメリカは主要な都市は核兵器によるウェイストランドと化し、残された国土と国民は国際連合の管理下に置かれることとなった。
それから300年、1、200万人のアメリカ原住民労働者たちは、国際連合の建設したドーム都市の中でかつての奴隷とほとんど変わらない暮らしをしていた。国連のドーム都市の外には、「アメリカの自由人」を名乗る野蛮なギャングたちが緩やかな氏族社会を形成していた。そして、被爆地域の周辺では野生化したミュータントたちがいると言われていた。
そして、「オメガ」がやってきた。ギリシャ文字の最後の一つであるオメガは、こうした300年に渡るアメリカの屈辱的な国連支配の時代を終らせるためのメッセージとして使用されるようになった。2419年7月4日、オメガ戦争が始まった‥。
というのが、SPIのSFゲーム雑誌「アレス」の14号の付録ゲーム、「オメガウォー」の設定です。
典型的な核戦争後ゲームの設定ですが、興味深いのは核戦争責任国家としてのアメリカが国際連合の管理下で隷属しているというところです。
アメリカが外敵に攻撃されるゲームと言うのは、アメリカではそれなりにニーズ(?)があるらしく、一定の期間ごとに新作が出るようです。
しかし、此処まで隷属しているものは、ソビエト支配下にあるアメリカを舞台にしたRPG「プライスオブフリーダム」と、この「オメガウォー」くらいではないかと思います。
この辺り、イロモノなゲーム企画では冴えを魅せたデビッド・ジェイムズ・リッチーらしい作品だと思います。
ゲームシステムは、かなり政治的な要素が強いものになています。
シークエンスは大きく分けて
 国際連合動員フェイズ
 反乱軍政治フェイズ
 反乱軍行軍フェイズ
 反乱軍戦闘フェイズ
 連合軍リアクションフェイズ
 反乱軍突破フェイズ
 連合軍行軍フェイズ
 反乱軍リアクションフェイズ
 連合軍戦闘フェイズ
 連合軍突破フェイズ
 反乱軍増援フェイズ
となっています。
シークエンスを見ると、行軍/戦闘/突破というダブルインパルス的なものに、相手側のリアクションが挟まれていることが判ります。
興味深いのは両軍によってリアクションのタイミングが異なり、反乱軍は移動/攻撃を続けて実施でき、国際連合はその結果を受けてリアクションするので戦線の穴の補修を行うようなリアクションになります。
これに対して連合軍は移動した直後に反乱軍のリアクションをされてしまうので、戦闘の起こりそうなところの防御側に増援されてしまい戦闘比が下げられてしまったりします。
シークエンスの非対称性が、両軍の戦術思想を支配する作りになっているわけです。
と、紹介すると、戦闘ユニットによる機動と戦闘のタイミングで展開する面白そうなウォーゲームに聞こえます。ところが、実際にプレイすると、そういう印象は受けません。
[つづく]