○ゴルの神官王を読む

bqsfgame2009-03-19

自分の都市コロバを破壊されたキャボットの旅は本題に立ち返った。
あっさりと神官王の領土へ辿り着いた彼は、そこへと踏み込んでいく。
神官王は、カミキリムシのような巨大昆虫で、蟻の巣のような社会を築き上げ、匂いで会話していた。
本巻の醍醐味は、この巨大昆虫社会を内側から念入りに描き上げた異世界ムードに尽きるだろう。
判ってしまえば、なんだ巨大昆虫か‥なのだが、それをミクロの詳細な描写から築き上げていくのが独特。
ヴァンスの「月の蛾」の音楽言語社会の異世界ムードも丁寧な細部の描写の積み重ねで構築されているが、それに勝る長編一冊まるごと昆虫社会体験記になっている。
とかくバロウズの亜流と言われるが、本書などを読むと、なかなか本シリーズは一筋縄では行かないという気がする。異世界らしい異世界の構築という点で、レムやヴァンスと比肩するくらいの力技を展開しており、一歩も引かないのだ。
一見の価値あり。