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bqsfgame2009-05-29

文学界新人賞を受賞した円城塔の2007年の受賞第一作、書き下ろし長編。
人類が発明した巨大知性体たちは自分たちで勝手に進化を遂げ、時空を越えて演算戦争を繰り広げている‥という未来世界を舞台にしたオムニバス作品。
往々にして言語明瞭なれど意味不明なのだが、それはそれで「それらしく」、ある意味でセンスオブワンダーになっている。帯に飛氏が、「作者は本書でもって、かのオイラーの等式を文芸で表現してやろうと企図したのでは」と書いているが、なるほど本書の訳の分からなさを捉えた表現かも知れない。
途中まではどうしようかと思ったが、終わりの頃になると、この独創的な作品世界が終ってしまうことが寂しく感じられるようになった。
久しぶりに日本の若手SF作家でセンスオブワンダーを感じられるものを読ませてもらった。
円城作品をまた読むこともあろうかと思う。