ゲームレビュー:ロボラリー

bqsfgame2009-08-01

ロボットの奮闘を描いたゲームの中で、恐らく一番売れたのは、「ロボラリー」でしょう。
「マジック・ザ・ギャザリング」で飛ぶ鳥を落とす勢いの快進撃を続けていたウィザーズオブザコースト社と、デザイナーのリチャード・ガーフィールドが、1994年に発売した堂々たるボックス・ボードゲームでした。
 その後、「アームドアンドデンジャラス」を初め、いくつもの拡張キットが発売されました。
一時は絶版状態になったりもしたのですが、ドイツ版がアミーゴから出版されたり、アメリカでも「アヴァロンヒル」ブランドでハスブローから再版されたりして、継続して入手できる人気ゲームとなっています。
ゲームのメカニズムは、比較的単純です。
各プレイヤーは9枚のプログラムカードを配られ、この内の5枚を選んでどういう順番でプレイするか決定します。実行する順に積んで全員同時に公開して、同時に解決して行きます。
プログラムカードは、
「1マス前進」、「2マス前進」、「3マス前進」、「1マス後退」、「右ターン」、「左ターン」、「180度ターン」となっています。
こうした行動を繰り返して、指定されたコースを回って行き、所定のフラッグにタッチしてゴールを目指します。
この比較的単純な作りの基本システムに、様々なガジェットが盛り込まれています。
先ず、ボード上には「コンベアベルト」が縦横に走っていて、この上に乗るとコンベアベルトに運ばれてしまいます。上手く利用すればスピードアップになりますが、思ったように動けないと逆に障害になる場合もあります。
「ギアー」は名前の通りに歯車で回転するターンテーブルです。この上に乗ってしまうと90度回転させられてしまいます。
「プッシャー」は名前の通りロボットを押す仕組です。ただ、その運動は断続的になっています。ロボットは5枚のプログラムしたカードに対応して5フェイズに分けて行動します。プッシャーはこの内の特定のフェイズにだけ動くのです。したがって、タイミング良く通過すれば何も起きませんが、タイミングを計り間違えると予定外のマスへと押されてしまいます。
「コンベアベルト」、「ギアー」、「プッシャー」は、移動の思惑を複雑にしますが、それ自体は危険という訳ではありません。
しかし、ボード上にはもっと危険なものも存在します。
「クラッシャー」は、良くコミック映画のアクションシーンで見掛ける天井から断続的に降りてきて下のものをペシャンコに潰してしまうアレです。これもプッシャーと同様に断続的に起動するのですが、この下を通過するタイミングを誤ると一発でペシャンコにされてしまいます。
「ピット」は底知れない穴で、この中に落ちたロボットは一巻の終わりです。
「コンベア」や「プッシャー」と、「クラッシャー」や「ピット」が絡んでくると、俄然ものごとは複雑になり、プログラムミスはロボットの命運を断つようになってしまいます。
これに加えて各ロボットは他のロボットを撃つ「レーザー」を装備しています。
さらに、ボード上には侵入者対策のためか固定式の「レーザー」が設置されている区画があったりもします。「レーザー」を浴びることは直ちに破壊に繋がりませんが、ダメージとして蓄積されていきます。
ダメージ1ポイント毎に、ターン更新時に配られるプログラムカードが1枚ずつ減っていきます。
実際にプレイするとわかるのですが、ダメージが4ポイント以上になるとプレイは急速に難しくなります。理由は配られたプログラムカードを、取捨選択できず全てプレイしなくてはならないためです。6枚以上を配られれば、不要なカードを外すことができるのですが、5枚以下になると都合の悪いカードもプログラムしなければならずロボットは制御困難になります。
さらに、カードが4枚以下になると、不足分は何もせずにだるま状態でコンベアなどの運ぶに任せることになってしまいます。
ただし、捨てる神あらば拾う神ありで、ボード上にはレンチのマークの「修理」スペースがあり、そこで少しずつですがダメージを補修することができます。
極端な手段として、1ターン完全にパワーダウンしてしまって全ダメージを補修することもできます。ただし、その間にとんでもない破局に陥らなければ良いのですが。
また、フラッグに辿り着くと、そこにアーカイブ記録が残ることになっており、先へ行ってロボットが破壊された時には最後に記録したアーカイブから再出発でき、スタートからやり直す必要はないことになっています。
さらに、「マジック・ザ・ギャザリング」のデザイナーであるガーフィールドは、オプションカードという形でガジェットを注ぎ込みました。
これは、ロボットを強化するオプションのカードです。これは修理スポットで修理する代わりに入手することができ、ダメージの代わりに捨てることもできます。
いくつかのタイプがあります。
追加武器タイプには、「後方レーザー」と、「ラム装備」があります。
選択武器タイプは、通常のレーザーの代わりに選択できるもので、「牽引ビーム」、「プッシュビーム」、「ホヴィッツアー」などに加え相手のプログラムを撹乱する「スクランブラー」や、「ラジオコントロールビーム」があります。
また、通常ビームの威力を強化するオプションとして、「連装ビーム」、「貫通ビーム」、相手に与えるダメージの種類を変えられる「火器管制」があります。
この他にも戦闘に影響するものとして、任意の方向を射撃できるようにする「砲塔」、通常時に1方向を防御をする「シールド」、パワーダウン時のみ全方向を防御する「シールド」、累積で3ダメージまでを無効にする「コーティング」などがあります。
移動時に影響を与えるランタイムオプションとしては、隣接マスからでもフラッグにタッチできる「メカニカルアーム」、後退速度を上げる「リバースギア」、前進速度を上げる「フォースギア」、逆に都合が悪そうな時に急停止する「ブレーキ」、プロットしたプログラムを捨ててランダムに引いたカードに入れ替える「アボートスイッチ」などがあります。
もっとも重要なものはプログラミングに影響を与えるオプションでしょう。「リコンパイル」は、もらった手札が悪い時に総取替えを可能にします。「増設メモリー」は手札を1枚増やし、「フライホイール」はカードを1枚持ち越して追加手札とします。「条件分岐」は、余分の1枚のカードをプログラムし都合の悪いときに予定したものと入れ替えられるようにします。
「ロボラリー」は面白いゲームなのですが、いくつか難点があります。
プレイするとわかるのですが、一番恐ろしいものはボード上の障害地形ではなく他のロボットの存在です。他のロボットからの攻撃や妨害や衝突によって思惑が狂ってしまったことで、結果として障害地形などの深刻な影響を受けるのです。
このため、スタートから団子状態が続いている間は相互作用で思わぬ展開が相次いで面白いのですが、抜け出して独走するロボットが出ると独走者がどんどん思惑通りに進んで勝ってしまいます。また、ダメージが累積してくると他のロボットの妨害がなくとも地形の障害を回避しきれなくなります。
ですから、コースは8の字などにしてトップのプレイヤーもまた他のロボットと相互作用のある位置に戻ってくるようにするのが良いでしょう。また、ボードが複雑怪奇すぎるものは避け、シンプルで即死になる障害地形が少ないものを選んだ方が良いと思います。