☆図説満鉄を読む

bqsfgame2010-01-30

これはなかなか面白い読み物だった。
満州を語る書籍の多くは、日本の侵略、傀儡政権の設立、収奪などについて陰鬱な口調で語り続けるものだ。そして、一部に、それとは正反対に、満州国大義を今でも声高に主張するものがある。
いずれにせよそれらは満州を政治的に論じているものであり、そうした書籍を読んでも、一向に満州の実像が見えてこないように思う。
本書は、満鉄の事業や建造物を中心に据え、多くの写真を掲載した図説本である。
その結果、他の同種の本とは異なり、植民地経営の実像について多くを語ってくれているように思う。
妙な話しだが、本書を読んでいると、ローズ&ボーツやウル1830のような開発系のボードゲームのリアルヒストリー版のリプレイを見ているかのような印象すらある。
そうした理解を踏まえた上でやはり特異なのは、民間の開拓事業であればあり得ない、大赤字を抱えての都市建設事業を満鉄が主軸に据えて断固として継続していた点であろう。
満鉄は、その名称とは裏腹に鉄道会社が主軸ではない会社であり、むしろ鉄道付属地を開発し、そこの植民地経営を行い、そこでの鉱山事業などにより収奪を行う機関であったという実像が本書からは見えてくる。
その意味では、引き合いに18xxシリーズを出すのは不適切な側面がある。つまり、鉄道が主役でないということである。
この一冊で満鉄のことが判ったような気になるには、あまりにも満鉄は巨大に過ぎる。しかしながら、「キメラ:満州国の肖像」を読んだ時よりも、遥かに実体のある血肉の通った満州像が得られたように思う。