○黒竜江陸戦隊を読む

谷甲州の覇者の戦塵も6冊目、これでカドカワノベルズ部分が終了する。
時代的には前巻から少し開いて1937年。
満州国は不安定な状況ながらも存続しており、その状況下で関東軍はさらに中国北部への侵攻を意図している。
そうした状況下で海軍の新設部隊である陸戦隊がソ満国境を流れる黒竜江の守備を担うと言うシチュエーションである。
本巻の焦点は、日中全面戦争への事変拡大は回避されるのか、ソビエトの介入を予防することはできるのか‥ということに尽きる。
本巻も依然として地味であり、なんとバックホー装備のトラクター、言い換えればパワーショベルが最新兵器としてかっこよく描かれるのは、本シリーズならではと言えるだろう。
陸戦隊と共に、河川砲艦や上陸艇が描かれ、「戦術的問題の宝庫」とも言われる河川を巡る戦闘が後半では詳述される。ここらへんのスコードリーダーやアップフロントのような戦闘描写は、シリーズの技術者視点とは別に、戦闘部分でも本シリーズが意外な本格派であることを今回も感じさせる。
そして、最後のページで問題の盧溝橋が発生する電話が掛かってきて本巻はクライマックスで幕を閉じてしまう。