○輝くもの天より墜ちを読む

bqsfgame2010-03-05

ラテンアメリカ疲れ‥(^_^;
と言うことで、女流SF作家シリーズ第一弾。
80年代に最初に女流作家ブームが言われた時の最初の御三家と言うのが、ルグィン、ウィルヘルム、そしてティプトリーだったかと思う。
ティプトリーが実は女性だったショックはアメリカSF界では非常に大きかったと言われるが、日本ではそれほどでもなかったように思う。そもそもティプトリー自体が、まだ日本ではビッグネームに至っていなかったからだろう。
本書は二冊しかないティプトリーの長編の一方。1985年と言うから、後半の作品と言って良いと思う。
意外なことに500ページを越える大作で、しかもミステリー仕立てになっている。
辺境の惑星を訪れた観光客の一団というシチュエーションで始まり、次の宇宙船が来るまでは一種の大きな密室という状況だ。そこに、ティプトリーらしい冷徹で感動的な、いくつものエピソードが織り込まれ、それらを踏まえてミステリーが展開されていく。
率直に言ってティプトリーは長編よりも中編作家だと思うし、本書を読むと、その印象がさらに強くなる。500ページもの長編を一本書くのなら、此処に盛り込まれたエピソードを分解して傑作中編を3本くらい書いて欲しかった気がする。
その一方で、敢えて彼女が後期に入って大作である本書をものにしたことには、なんらかの思いがあったのだろうかという気がする。それは何だったのだろうか?
未読作品、未訳作品が少なくなり、ティプトリー作品は希少資源になりつつある。