○宇宙知性チョッキーを読む

bqsfgame2010-12-23

ジョン・ウィンダムは、フィリップ・ディックに出会うまでは筆者の一番好きなSF作家だった。イギリスでは、ウェルズとクラークを繋ぐ存在と言われるほどのベテラン作家。
破滅テーマの巨匠と呼ばれるが、本書を読むと、むしろ人類文明に対する警鐘を鳴らすと言う古典的なSFのメッセージ性を強く意識した作家だったのだと思う。その手段として破滅テーマと言うシチュエーションが存在したのだろう。
本書はイギリスの一家族の物語。息子が見えない友達と話しをするようになってしまった。その内に、その見えない友達の存在はますます否定しがたくなり‥という物語だ。
本書は当初は遺作と見られていたが、後に遺言に従って「ユートピアの罠」が刊行された。率直に言って、メッセージ性や、物語の手触りとしては本書が最後で良かったのではないかと思う。地味だが、なかなか上質の物語だ。
ハヤカワの銀背、未だに文庫収録されていない。