○エステルハージ博士の事件簿を読む

bqsfgame2011-03-08

奇想コレクションが好調な河出書房新社の新叢書、ストレンジフィクションの一冊目である。
図書館に予約したのだが、かなり関心の高い本のようで随分と待たされてようやく読んだ。
これは悪いパターンで、待たされるとどうしても期待値が高くなりがちで、往々にしてガッカリして終ることになる。本書もそのパターンに嵌まってしまった。
つまらなくはない。
中央ヨーロッパ第一次大戦前に存在していたと言う架空の国、スキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国を舞台にした、なかなかに洒落た連作集である。
この架空の国を設定し、その国の雰囲気を描き出し、そこに住む人間を魅力的に紹介するということには申し分なく成功している。そして、最後の一編では、何故にこの国が現代史において何の痕跡もなく消滅しているのかと言う理由付けさえしている。
内容も洒落ているが、カバーアートも洒落ている。外表紙も良いのだが、内表紙にこの謎の三重帝国の地図が描かれているのが素晴らしい。
ただ、そうした雰囲気先行で、ストーリー的には今一つの作品が並んでいるという気がしてならないのは残念無念だ。そこは、そういうものだとして、それを評価できるかどうかが本書の分かれ目なのだろう。
確かに「ストレンジフィクション」ではあると思う。