×蒲生亭事件を読む

bqsfgame2012-12-19

1997年の日本SF大賞
天下の宮部みゆきの書いた時間SFで大賞受賞作と聞いては期待は大きくなろうと言うものです。ですが、期待が大きすぎたのか、正直に言うとガッカリしました。
問題点はいろいろとあります。
1:長さの割にはストーリー展開の起伏に乏しい
2:時間テーマSFで、殺人事件ミステリーで、226事件の時代小説になっているが、どの側面でも中途半端になっている気がする
3:主人公がいつまでも同じことを同じように悩んでいて鬱陶しい
と言う3点が大きいでしょうか。
時間テーマSFと言うと、タイムパラドックスとか、歴史改変を軸に展開するものが多いですが、本書では早々にタイムトラベラーの限界を明示してしまい、そうした醍醐味は薄くなっています。ミステリーとしては、謎解きの醍醐味が薄く、そこが物語の焦点にはなっていない気がします。時代小説としての側面は、蒲生大将の226事件における重要性自体が低いので、さらに薄いように思います。
これを大賞に選考したのは不思議な気がするのですが、選考委員を見ると丁度小松先生が抜けた回になっていて、SFゲットーの中以外から出そうと言う意識が強かったのだろうかと愚考してしまいます。ちなみに、次の回はほぼ同じメンバーで瀬名秀明を選んでいるので、そうかもなぁと思ってしまいます。