早速ですが読んでみました。やはり日本語ルールは断然読むのが速いです‥(^_^;
どうしてもウォープランドロップショットとの比較で語っておく必要があると思い、ウォープランドロップショット1のルールも読みました。本当は両方ともソロプレイしてからとも思いましたが、特にドロップショットはプレイ負荷が重いのでルールだけで書いています。
まず設定年代です。
フェイルセイフのルール冒頭には、1957年との記載があります。この年は、ソビエト連邦が人口衛星スプートニクを史上最初の大陸間弾道弾R−7で射ち上げた年です。言わばミサイル核戦争元年です。この意義は今となってはわかりにくいので、少し説明を加えましょう。それまではB−29を発展させた戦略爆撃機による核爆撃が主力であり、戦略爆撃機分野ではアメリカに優位がありました。R−7の登場は、このアメリカの優位を翻し、ソビエトが核戦争でイニシアチブを握ったことを示すものだったのです。ですから、人工衛星の射ち上げと言う見掛けとは裏腹にペンタゴンは震撼させられたのでした。この点を理解すると、なぜトワイライトストラグルで宇宙開発競争トラックが重要なのかが判ります。
一方、ウォープランドロップショットは最終形では三部作で、それぞれが50年代、60年代、70年代を扱うようになりました。1では、1950年(朝鮮戦争の年)、1957年の二つのメインシナリオがあります。
この扱う年代範囲の違いが、両者のシステムに決定的な違いを生んでいます。
フェイルセイフでは、1957年の一点に絞っているので、ゲームシステムは戦略爆撃機を中心に作っています。そして、戦略核兵器が投下されるような戦争では短期間で世界が壊滅することから、ゲーム期間は短く、在来型の陸戦は無視されています。陸軍は移動できず、単なる対空射撃マーカー兼目標でしかありません。
それに対してウォープランドロップショットでは、在来型の地上戦がシステムに入っています。北極中心の戦略マップとは別に欧州の作戦マップがあり、両者の間をユニットは移行できます。陸軍も単なるマーカーではなく陸戦ユニットとして機能するルールを持っています。実際問題として在来型の陸戦に意味があるかは、シナリオの年代が進むに連れて疑問になってきますが、そうした在来型の戦争がアウトオブデイトになる過程を正に体験させるのがドロップショットの狙いの一つなのだと思います。
そういう意味で、両者には立ち位置の違いがあります。結果として、フェイルセイフはドロップショットよりずっと簡単なゲームに仕上がっており、雑誌の付録として適当な内容だと思います。裏を返せば、ドロップショット三部作はジップロックの同人ゲームでありながら、ヘヴィー級の内容を持つ本格派と言えます。
ですので、ドロップショットを購入して意外な内容の重さで押入れに直行させてしまった人には、改めてフェイルセイフを買う価値が十分あると思います。
その一方で、ドロップショットをプレイ消化できているなら、そんなにフェイルセイフを買う必要はないかなとも思います。ただ、ドロップショットでは対戦相手が見つけにくいと言うことはあるので、そこのニッチ需要はあると思います。
いずれにせよ両者は同じ題材ですが、建付けがかなり異なっているので、今改めてフェイルセイフが出たことの意義はあると言えましょう。