千葉会:アメリカ革命:北米の決断を対戦プレイする

初対戦に漕ぎ着けました。
結論を先にまとめて置きましょう。
1:軍事、政治、外交の全体をコンパクト(?)にまとめた好ゲームである。
2:軍事的なオペレーションも選択肢が広くてなかなかエキサイティングである。
3:戦闘システムに問題があり、特に両軍の規模が大きくなる中盤以降のプレイには支障がある。
と言う感じでしょうか。
1については、ソロプレイ段階でも評価して来た通りです。対戦しても面白く機能しました。
2は、ソロプレイでは、それほど思わなかったのですが、対戦では格段にエキサイティングでした。互いに相手の弱点を狙って知恵を尽くしてプレイすると、毎ターン、まさに「北米の決断」と言うべき意思決定が連続しました。逆に、あまりに思考負荷が大きすぎて、プレイ時間は当初想定を大幅に越えました。1ターン=2時間くらいのペースだったかと思います。ソロプレイでは40分と思っていましたから3倍です。これだと、朝から丸一日かけても終るかどうかと言う印象で、「コンパクト」と言う表現も適切かわからないほど重く感じました。
で、問題は3です。ソロプレイの時には問題を感じなかったのですが、対戦では深刻でした。具体的には第3ターンのバルティモア決戦です。アメリカ軍が総戦力20で、総戦力15のイギリス軍を攻撃しました。で、このゲームでは戦闘は同時でなく先手後手があります。このくらいの破壊力になると、先手の有利が圧倒的になります。アメリカ軍が先手を取り、第一撃でイギリス軍を全滅させてしまいました。結果として、アメリカ軍は無傷で、イギリスの15戦力を撃破しました。で、先手が逆だったら、その逆に近いことが起こったと想定され、どちらにせよ一回の戦闘で先手を取ることの価値が過剰に大きすぎると両者とも感じました。結局、ここでゲームは時間の都合もあって中途終了としました。
問題なのは、ゲーム序盤では1ユニット=1戦力の民兵が主役で、その段階では問題なく推移します。ところが、2戦力のレギュラー、さらに3戦力のエリートが登場すると、攻撃力は2倍、3倍になるのですが、ステップ数は増えません。ですから、防御力に対して攻撃力が過剰に大きくなり、結果として先手の有利が一気に拡大するのです。
このことが顕在化するに当っては、パルチザンルールを不採用としたことが遠因となっています。パルチザンが活動しないので、両軍の収入が順調に伸び、結果として両軍の規模が大きくなりやすくなりました。その結果として、戦闘システムに内在していた問題が早期に現実化するようになったのです。
それにしても19世紀型の戦闘で、大規模な軍隊が衝突した時に、ワンサイドゲームはあるにしても、全く無傷で敵の大軍を撃破できるとは思えません。
たとえば南北戦争でもっとも有名なゲティスバーグでは、敗北した南軍の死者4700に対して勝利した北軍の死者も3200に達しました。死者で見ると、勝者も敗者の2/3くらいのダメージを受けています。
ゲティスバーグは、それなりに接戦だったので、ワンサイド勝利として有名なブレンハイム(スペイン継承戦争)を見ると、
フランス軍の死者は実に20000人に及ぶ、対するマールバラ公軍の損害は5000です。このくらいになると、歴史的にも稀なワンサイドゲーム、「フェイマスヴィクトリー」と呼ばれるわけです。それでも、敗者のタラール軍も5000と言う自軍の1/4に当る損害を返しています。
要は、今回のプレイで発生した、損害数15対0と言うアウトプットは、18世紀から19世紀の戦闘では不自然と言わざるを得ません。
また、競技ゲームとして見た場合に、プレイヤーの意思決定ではなく、先手決定のダイスロールによって勝敗が決定的に支配されてしまうのだとすれば、プレイ意欲を持続するのは困難と言わざるを得ないでしょう。
DRAGOONさんと終了後にお話ししましたが、「戦闘の問題点以外はゲームとして非常に面白い」ので、お蔵入りにしてしまうには惜しいです。そこで、戦闘システムのみ、同時射撃に変更してやってみてはどうかと言う案が出ました。プレイ時間が掛かることが判ったので、その場で再戦などできませんでしたが、改めて機会を作ってやってみようと言う話しになりました。
それ以外にも戦闘関係で奇異に感じられたのが上陸戦闘です。
そもそもルールの記述が不十分で良く判りません。
ルール的には、上陸戦闘は、通常の戦闘と同様に解決するとあります。特段、防御側に有利な修正はありません。さらに、上陸戦闘では通常のルールに加えて、攻撃側はフリートの攻撃力で攻撃できると書いてあります。
で、議論になったのが以下の諸点です。
a:攻撃側がフリートで攻撃するのは良いが、下船した陸軍ユニットは攻撃できないのか? それとも陸軍は通常通りに攻撃した上で追加でフリートも射撃するのか?
b:防御側の反撃で出たダメージはどう処理するのか? aの答えがフリートだけで攻撃するだとしたら、フリートだけで消化するのか?
c:aの答えがフリートだけで攻撃で、bの答えがフリートだけで消化だとすると、フリートが沈んだ時点で攻撃側の攻撃力は失われる。そうすると撤退しなければならないが、乗って帰るフリートが沈んでいる訳だから帰れない。したがって、陸軍も全滅なのか?
d:またルールには、フリートは直接陸軍を攻撃できないと言う記述もあるが、これは矛盾してはないか?
などなど、ここらへんは不明点続出でした。
一応、当日の解釈としては、フリートのみで攻撃するが、ダメージは陸軍で吸収しても良いとしました。これで、一応、プレイは成立しました。
ただし、それでも奇異なことがあって、ゲーム序盤の陸軍がミリティア中心の時代にはフリートの方が強いので上陸戦闘は上陸側が有利となります。これは一般的なウォーゲームの通念とは齟齬があります。普通の攻撃より強襲上陸の方が楽だと言うのは俄かに信じられません。
また、陸軍が強力になってくると、極めて強力な上陸部隊を用意しても、それが上陸戦闘には反映されないので上陸戦闘のリスクは急速に増大します。
と言うようなことが起こってきて、独立戦争の期間中に上陸戦闘の位置付けがこんなに変わるのも変だなと思いました。
個人的な提案ですが、上陸戦闘では、
e:攻撃は同時解決と言う上述の陸戦に従う。
f:攻撃側は上陸した陸軍ユニットも攻撃に参加できる。フリートは最初の戦闘ラウンドだけ射撃できる(艦砲射撃の表現)。
g:防御側は最初の戦闘ラウンドだけ1ユニットごとに+1戦力で射撃できる(水際防御の表現)。
と言うのではどうでしょうか?
このくらいのルールで一度やってみたいと思っています。
また、パルチザンルールについては、両軍の戦力規模の拡大が少しおかしい気がするので、使うのが妥当なのかと思い直したりしています。ただ、かなりアメリカンヴァイアスな気がするので、どうしたものかとも。
いずれにせよ、雑誌の付録ゲームながら、まだまだ遊んでみたい貴重な作品であることは間違いありません。