☆時の地図を読む

bqsfgame2015-07-22

上下二分冊800ページ強と言う力作ですが、リーダビリティは快適です。スペイン語圏と言うこともあって、訳文が読みにくい不安を持っていましたが大丈夫でした。
HGウェルズの「タイムマシン」のオマージュ小説です。でも、イギリス作家以外が書くのは珍しい。
全体は三部構成ですが、第2部まではタイムマシンは出てきますが全然SFではありません。タイムマシンが出てくるのに、どうしてSFではないのかが、本作の醍醐味なので種明かしはしません。
第1部は、娼婦に入れあげた富豪の息子が彼女を切り裂きジャックに殺されてしまい失意のドン底に。それを従兄弟が見かねて、近頃ロンドンで話題の未来旅行に連れて行こうとします。
第2部は、問題の未来旅行に行った深窓の令嬢が未来の英雄と恋に落ちてしまう話し。しかし、未来旅行は実は訳ありで、この恋は無理があるのですが‥。
いずれにもHGウェルズが登場してきて、深くかかわります。
第3部になって、突如としてSFになります。次々に発見される熱線銃で風穴をあけられたとしか思えない変死体。死体の傍には未発表の小説の冒頭の一説が。その一つがウェルズが書き上げたばかりの「透明人間」だった。
とまぁ、そんな訳で全編HGウェルズ先生が大活躍します。
ウェルズへのオマージュ小説と言うと、プリーストの「スペースマシン」が傑作ですが、本作もなかなかのものです。