○バービーはなぜ殺されるを読む

bqsfgame2016-01-01

創元から1987年に訳出されたヴァーリイの第2短編集です。
なんで30年も経ってから初読なのかと言えば、ヴァーリイの途中の作品の評価がきわめて低いからです。「ミレニアム」、「ティーターン」、「スティールビーチ」などは、いずれも作者が病んでいるという不快な印象を与える作品でした。
本書は1980年とヴァーリイ初期なので期待できるかと思ったのですが、今一つでした。
そもそも今になって発掘してきた最大の理由は、創元から八世界全短編集1というのが登場したからです。中身を見ると、「ピクニックオンニアサイド」を除けば、軒並み「残像」に入っている作品ばかり。では、本書を読んでしまえば買わずに済むわけです‥(^_^;
文句を言いながらも○にしたのは、「ビートニクバイユー」と「さよならロビンソンクルーソー」の2編が非常に良かったからです。これだけのために読んでも良いかも知れません。他は読まなくて良いのではないかと思います。
病んでいる印象が強いのは、「バガテル」、「イクイノックスはいずこに」、「バービーはなぜ殺される」、「ブラックホールロリポップ」あたり。「マネキン人形」と「びっくりハウス効果」も危うい感じです。
結局残るのは、上記の2作品と、デビュー作である「ピクニックオンニアサイド」だけになります。何と言う低打率でしょう。
特に表題作は、どうしてこれを表題作にしたのかセンスを疑ってしまいます。本国での再版時には「ピクニックオンニアサイド」を表題作にし直したというので、米国での評価も同様なのでしょう。
しかし、こうしてみるとヴァーリイという人は、78年の「へびつかい座ホットライン」と79年の短編集「残像」だけの人だったのかなと思います。驚くべき旬の短さです。
「デーモン」も「ゴールデングローブ」も「マンモス」も訳されませんが、それで良いのかと納得するようになりました。
本当に残念なことです。