☆火星の人を読む

bqsfgame2016-06-08

アンディ・ウィアーの長編第1作にして、映画「オデッセイ」の原作。
SFが読みたい:海外1位、星雲賞:海外長編部門を受賞。押しも押されもしない近年話題のSF大作。
結局、風化しやすい映画表紙を避けて、わざわざイラスト表紙の一巻本で古本屋入手しました。574ページは、少し手に重いですが、リーダビリティが高いのであれよあれよという間に読み終わります。
元来が映画と言うのは、小説で言うと100ページくらいの中編を表現するのが適当な寸。574ページは、当然のことながら入りきる訳がなく、脚本でエッセンスを適当に切り出して上手くまとめています。
原作はそれ以外の要素も豊富に入っているのですが、脚本が上手く出来ているので、それほど違和感はありません。
解説にもありますが、本書の凄い所は「火星で生き残り、救出してもらう」という純然たる科学的挑戦に集中して、余分な要素がほとんどないことです。それでいて、読み応え十分、エンターテイメント性も意外なほどにあります。「グラヴィティ」との比較が出るのは、映画の公開タイミングからして無理ないでしょう。個人的には、クラークの「渇きの海」をむしろ思い出しました。宇宙空間の過酷な環境以外には余分な敵は不要だと言う点で共通していると思います。
この辺の作品を称するサブジャンル名として「テクノスリラー」という用語があるようで、ハヤカワ文庫の新刊「ラグランジュ・ミッション」の説明にも使われていました。そういう意味では、ちょっとそちらも気になってきました。