○アメリカの最も長い戦争上を読む

bqsfgame2016-11-27

ヴェトナム戦争の通史です。
1985年の出版ですから、サイゴン陥落10年後。その時点で公開されていない史料は反映されていませんから、決定版ではないかも知れません。
しかし、手に入りやすいもので全体が理解できる本としては、今でも良いのではないかと思います。
上下二分冊です。上巻は、ジョンソン大統領が北爆に続いて陸戦部隊を本格的に投入するまでです。
本書を読むと、ことヴェトナム戦争に関しては、ケネディと言うのは本当にダメな人だったのだと思いました。カリスマ性があり悲劇的な死で美化されていますが、ヴェトナムについては「間違った意思決定をして進路を定めてしまった責任」はケネディにあると思います。
アイゼンハワー大統領時代には、フランスの手伝いに甘んじていたが事態が悪化する一方。その結果、自ら主役として介入した訳ですが、その時点から警告する人がいたにも関わらず、ケネディはどこでも踏み止まらずに進み続けて破滅の種子をジョンソンに引き継いでしまいます。
ジョンソンは最終的に北爆を開始し、陸軍部隊を投入してアメリカの若者の血を大量に流しましたが、彼が引き受けた時には既にどうしようもなくなっていたと言う気がします。その時にはもう、アメリカの威信を傷つけずに手を引くには遅くなり過ぎていたのです。
本書を読むと、ドミノ理論の迷信的なまでの恐怖というのがアメリカの東南アジア政策をことごとく間違わせたという気がします。結果論から言えば、「ところで、ハノイを放っておくべし」が正解だったというのは今から振り返る後知恵でしかないのでしょうか?