○ボタン穴から見た戦争を読む

bqsfgame2017-01-16

ノーベル文学賞作家、スヴェトラーナです。
一連のユートピアの声というシリーズの中の2番目になるそうです。ちなみにチェルノブイリの祈りが4番目だそうです。
いずれにせよ戦争や原発事故で生活を踏みにじられた人々の声を、作者の心情を交えずに語り続けていきます。
本書では、ナチスドイツに踏みにじられた白ロシアミンスク周辺、現ベラルーシ)の子供たちが語り手です。
この地域ではドイツは村人ごと村を焼き払うことを繰り返し、パルチザンを徹底的に掃討しました。子供たちの父親や、時には母親や兄弟姉妹もパルチザンとして戦い、多くは殺されていきます。
しかし、それを集約してドイツが悪だとか、パルチザンが正義だとかいう整理を作者は決してしません。
解説にもありますが、弱者に必ず正義がある訳ではないという透徹した認識が原著者にはあるのだと思います。
読んでいて重苦しいですが、リーダビリティは高い本です。
独ソ戦のウォーゲームをプレイする人は、是非一読して欲しいと思います。別にウォーゲームをプレイするなと言うことではありません。ただ、戦争の実際の一断面なりと理解しておいて欲しいと願います。