×銹びた太陽を読む

bqsfgame2017-07-16

二度目の本屋大賞を受賞した恩田陸です。
受賞作はあっという間に図書館で3桁の予約待ちになりました。凄い、本屋大賞
で、仕方がないので、直木賞受賞第1作でロボットとゾンビが出てくると言う本書を借りてきました。
うーん、リーダビリティは申し分ありません。あれよあれよと読み終わってしまいます。で、面白かったのかと言うと首を傾げます。
茨城県北部と思われる原発事故(実はテロ)による汚染区域。人間が立ち入れない区域を維持しているロボットたち、ウルトラエイト。そこに出没するマル非ことマルピーと呼ばれるゾンビたち。そういう大道具を配置して置いて、そこに現れた国税庁の女性職員、財護徳子。なんと、彼女の目的はゾンビと言えどもインフラを利用しているなら納税の義務があるから、納税可能かどうか調査に来たのだと言う。
まぁ、そんなファンキーな設定で始まるのですが、汚染地域を巡る国家規模の陰謀なども登場してきて、のほほんとした語り口とは噛み合わないハードな展開も見せます(笑)。
途中に出てくる、太陽にほえろ、ワイルドセブンなどなどの昭和ネタ。サンダーバード2号とか、ネズミのアルジャーノンというSFネタ。赤玉、青玉、九尾の猫という和風妖怪テイストの怪生物。シリアスな屋台骨はそっちのけで、軽快な語り口調でアッと言う間に450ページは終わってしまいます。
で、なんだったの?
うーん、なんだったんでしょう?
恩田陸はファンタジーノベル大賞の出身ですが、そう言われるとなるほどと思います。
北野勇作に、ちょっと近いかもしれません。道具立てはバリバリのSF、展開は意外とご都合主義のファンタジー、語り口調はスラップスティックコメディーって感じです。
原発問題に関するアンチテーゼ小説として読み解く意見も見掛けますが、そこは無理して読めばそう読めなくもないというくらいの印象です。
むしろ、カート・ヴォネガットの延長線にあるくらいの感じでしょうか。割と好みの分かれる作品かなという気がします。
つまらない訳ではありません。でも、再読することはないでしょう‥(^_^;